2023年12月15日金曜日

『記念版画集』協賛/中林忠良

◆有元利夫オマージュ『記念版画集』

【収蔵作家】
猪爪彦一、岡谷敦魚、佐藤妙子、高橋洋子、玉川勝之、ワタナベメイ
協賛:中林忠良


ご紹介をまとめたトピックスはこちら⇒

______________________________________


中村玄さん企画の『記念版画集』には、県内作家6名の作品に加えて、有元利夫の恩師である版画家、
中林忠良さん(
2023年 文化功労者 受章)から「協賛」としてご提供いただいた作品が収蔵されています。


長年の交流のある中村玄さんに頂戴したメッセージをご紹介いたします。

有元の版画集を音楽に、ご自身の版画集を映画の構成にたとえた考察は、複数の「版画集」と音楽を基軸とする中村玄コレクションをより深く味わ
うための導きでもあるように感じられ、『記念版画集』に収められた各作家の作品世界にも、新たな思いを巡らせます。






《 転位 ’98-小さな地 》

銅版画/エッチング・アクアチント





「版画集について」

銅版画家 中林忠良 (日本美術家連盟理事長)

 

親しくしている中村玄さんご夫妻からの依頼で、版画集について少し書いてみる。
ご希望に添えるかどうかは分らないが、僕の版画集についての考え方と有元利夫さんのそれとの違いとでも言ったことを書けばいいのかと思う。
 

有元利夫さんの版画集は幾つか観ていると思うが、そこにはストーリーという、例えばファーストシーンがあり起承転結をもってページが繰られていくというような時間の経過、展開はなく、それは僕の考える版画集とは確かに異なるものだ。
 
 有元さんの版画集の全てを丹念に追ったことはないので、思い違いもあるかと思うが、“作り虫”の有元さんの手は頭の中を流れるリュートの響きを仲立ちに、溢れる詩情に即興的にニードルを走らせたように見える。彼にはバロック音楽の通奏低音のような響きが身の内にあって、それを汲み上げるように、音が次の音を導きあるいは休止と連続を繰り返しながら、やがて陽が落ちるように頁が終わるのだろう。

だが僕の作り方は違う。映画にファーストシーンがあるように、そしてそれがどのように中ほどに関わりラストに閉じるかを考えながら作っている。初めの絵がどのように中盤に変貌し反転し、やがて終局に向かってどのように流れ込むか、ドラマツルギーは大切と考えて、いつも制作している。

 





《 転位 ’96-小さな地 》

銅版画/エッチング・アクアチント



『記念版画集』の作品は、6名の県内作家の作品についてはバラでの販売もございますが、
中林忠良さんの作品はセット販売にのみ収蔵されます。

セット販売(限定5組)をお求めのお客様は、上画像の2作品いずれかをお選びください。
2作で計5枚につき、両作品からお選びいただけるのは先着順となります。
ご了承ください。







喫茶室には、中林忠良さんの銅版画展(2019)の図録もございます。
ご覧になりたい方はお気軽にお声がけください。


長年、有元利夫を含む多くの後進を育み、
国内の銅版画界を牽引しこられた中林忠良さんの、その道のはじまりは、東京藝大絵画科油画先行在籍中の集中講義で「版画」という油絵とは全く異なる世界と出会い、銅版画の腐蝕技法に魅了されたことであったとのことです。


今、長岡造形大学では岡谷敦魚さんが銅版画を教えておられ、
学生たちの多くはそこで初めて銅版画を体験するのだと思います。

岡谷さんは、作家紹介でも触れたように⇒
★ 制作環境を地域にも開き、
学生以外にも銅版画制作との出会いの場を提供しておられます。
その「工房このすく」には、高校生も制作しに来ているとのこと。

いつの、どんな出会いが、なにとつながっていくのか、、、
若いひとたちの行く末を思うとワクワクしますが、
そうしたこころ惹かれてやまぬものとの出会いは、年齢問わず、いつでもあるもの。

先達が遺してくれたもの、同時代の中で直接手渡されていくものの様々を、
改めて感じる会期でもあります。





会期中は、中村玄さんが有元利夫関連の蔵書をたくさんご持参くださっています。
作品のみなならず、貴重な宝物を惜しみなく見せてくださる玄さんです。


◆中村玄さん終盤の在廊予定 12/16(土)・17(日)・18(月)

◆12/17(日)は音楽会開催につき、ご観覧は16時半にて終了いたします。
◆12/18(月)最終日は16時にて閉幕です。ご注意ください。