2026年5月15日金曜日

《染め織り縫う編む》矢川実侑

今回、なんといっても癒されるのが、矢川実侑さんの作品です。

とりわけ窓辺の展示台に配置された、石塑粘土と、おさえた色彩で表現された《淵源》は、
さりげないミニチュアのようでありながら、造形と余白のなせるわざなのか、
見るものをゆたかな川べりへといざなう、秀逸な作品です。






《淵源》


ときどき土手を散歩します。
風にそよぐ草木や水面を泳ぐ鴨など、散歩道の景色を見ていると
今まで自分がいた場所とは違う世界に来たような気分になります。

大きな川のようにゆるやかな時の流れのなかで、
草木や鳥たちが各々の時間を過ごす空間が心地よく、
その桃源郷のような景色を刺繍糸や淡い彩色で表現しました。







中学生の頃、仏像に対して「かっこいい!」と魅了されたという矢川さん。
大学で木彫を学び、卒業後は仏具の修復などを手掛ける工房に勤め、
現在は主に金箔を貼る工程を担当しておられます。

作業時は特別なケハイの中で、厳かなこころもちで過ごすものだろうかとお尋ねしたところ、
最初こそ、工房にずらりと並ぶ仏像に圧倒されたものの、
今では納期を意識しながら、あくせくと必死に手を動かす日々とのこと。

そんな中、時折足を運ぶ工房近くの刈谷田川の景色こそが、
別世界のように感じられるのだとか。








会場にひしめく(矢川さん含む)各作家の、細密で、計り知れない根気と探求力を感じる作品と対峙し、
お客様と語らい続けた一日のおわり、

窓辺の作品の傍らに佇むとき、

えもいわれぬ安堵と、至福に包まれる、、、

この感覚を、
どう言い表したらよいかと思い巡らせて過ごした会期でした。


彼女が感じているのは、、 伝えたいのは、、、
きっと、この感覚なのではないかと、思うのです、、






作品タイトルの「淵源」とは、「物事が成り立っている根幹、あるいは事の起こりとなる「みなもと」のことで、単なる始まりだけでなく深い背景や根本的な原因・ルーツを意味するのだとか。

矢川さんの工房の裏手を流れる刈谷田川は、奇しくも私の生まれた町を流れる川でもあります。

暴れ川の歴史をもち、2004年には人命を奪う大洪水をもたらした大変な川でもありますが、
私が川好きであること、川のある町、川べりの環境を好んで暮らしてきたことのルーツでもあり、、、

そんなことも思いながら、鴨たちの浮かぶ白き川べりに佇む夕暮れ。






そうした私情はさておき、

絶妙な配置と相まって、
川の土手を模した造形が、
外側を形作らず、川側の内側斜面のみで構成されていることが、

”娑婆”ともいうべき土手の外側から視線を切り離し、
”彼岸”としてのあちら側、川べりへと向けさせるようにも思われ、、

空間をつくる彫刻の
ちからを、改めて感じさせられています。






《寂しくないように》


夏に瓢湖を訪れたときに、怪我をした白鳥が北へ帰らずに過ごしているのを見ました。

冬には枯れ木と雪の白だけだった湖に、梅雨には紫陽花、夏には蓮など
白鳥のそばに生い茂る植物も次々と咲いていました。

ゆっくりと羽を休め、次の冬が終わる頃には北へ飛んでいけるようにと願って制作しました。

 






《素敵な夢を》


愛犬と茶の間に行くと、嬉しそうに座布団の上でお腹を出してごろごろします。
その姿はまるで踊っているようで、とても幸せそうです。
犬の日々が踊るように楽しい毎日であればと思い、その姿を作品にしました。










《再逢一処》

毛糸、羊毛、布、檜/2023-2024







中央に展示された連作は、卒業制作《再逢一処》のメインとなる彫刻の大作の
周囲に配置された、毛糸や布で絨毯様に仕上げられた雲のような造形作品。






その上にはさりげなく、新たに制作された、いとおしき動物たち。












名残り惜しき会期末





矢川さんには、彫刻に毛糸を配置する作家としての志向に着目しての出展依頼でしたが、
大学で学ばれたことと、個人として表現したいこと、
そして仏具・仏像の修復に携わる職人としての生業が、
たしかな一本の道の中にあることに出会わせていただけたことが、とてもうれしいことでした。

この先、いずこに比重が置かれようとも、
その道行きを、たのしみにさせていただきたいと思います。







▶作家在廊予定

5/16(土)勝見(終日)、高木(午後~)
5/17(日)勝見、星名、山川(終日)、高木、矢川(午後~)

最終日は16時にて閉幕です。



2026年5月14日木曜日

《染め織り縫う編む》勝見俊介

開催中の展覧会《 染め 織り 縫う 編む 》では
「編む」担当イメージでご出展いただいた勝見俊介さんなのですが(!)

今回は機械編みをもとにした作品のほか、
デザインの手法は共通すれど、編んではいない作品も。


かぎ針編みの作家として出会った勝見俊介さんの進化・変化が著しくて、
1年ぶりの作品に、昨春とはまた違った衝撃と感嘆が尽きません。






お客様方も、なんとなく糸的な素材感は感じつつも、
これは一体、、、? と、戸惑いが隠せない様子がうれしい会場








以下、作品のコメント(色文字部分)は勝見さんのインスタグラムから引用させていただきました。
@
shunsuke_knit_something


色彩は再現できていません。
会場で実作品をおたのしみください。





《 綱引き 》

ナイロン糸、アクリル絵具、テグス、釘、木製パネル、アクリルパネル
41.8×46.4cm/2026 


透明な糸で編んだ編み地に着色した作品。
編み目に目詰まりさせるようにして色を付けた。






星名康弘さんの植物染めの作品を見てわかるように、
染め物といえば「糸」を染めますが、





勝見さんの作品《綱引き》は、ベースとなっているのがナイロン糸であるゆえに染まらず、
編み目の「目」の中にアクリル絵の具を置くように、「目」の部分を埋めるようにして、
ハーフトーン化した写真を再現しているとのこと。


プリントだったら一瞬で仕上がるようなことを、

作家は、ひと目、ひと目に、、、、 編むかのように、、、


この作品を魅せるための額装や、もとになった写真の由来など、
見どころ、語りたいことの尽きない作品です。






 




《 Uncle 》

プラスチックボール、アクリル絵具、テグス、木製パネル、アクリルパネル
49.3×36.4×9cm/2024-26


印刷やシルクスクリーンなどで昔から使われる網点を、
実際のボールにしたらどうなるかなと思い作った作品。

元にした絵柄あり

ボールは、サヨリ釣りの仕掛けのウキと同じ付け方でやった。







《Uncle》はいわゆる”編んだ”作品ではない装いですが、
網点化した写真をベースに用いていることで、《綱引き》と連作のような、派生する作品。



そこには毛糸用のかぎ針も、機械の編み機もなく

空間にドットをうつくしく編み上げる
作家の指先があるのみ








モチーフとなっている元絵について、会場では答えをお伝えしておりますが、
(聞けば、嗚呼!と合点) 聞かずともわかった方はおられるでしょうか…?






アクリル板への固定の仕方も、影もうつくし





《 Warming Up 》


ウール、木製パネル
34.2×50.1cm/2026


家庭用編み機を使用したインターシャという編み方の作品。
車は70年代のミニカスキッパー。





色の切り替え時に生じる糸の端々

本来は裏面になるところ





(うちわなどで)風を受けると疾走感満点





勝見さんは、編み上げたのちに、絵柄を見せるための張り具合を考慮しながら、
作品に合わせて自ら額装をされます。

見せる形状に仕上げてこその完成。
そのための工程もまた、1作、1作、異なる工夫が凝らされた、気の遠くなるような仕様です。



《 Warming Up 》も仕上げが大きなひと仕事。

画像では木製パネルに貼ってあるように見えるかもしれませんが、実はそうではなく、、、

貼っただけでは端からめくれてくるであろうということで、
どうしていると思いますでしょうか、、、


ニットだから手のかかることがあり、
ニットだから対応できることがある、、


作家の意匠は細部に至るまで甘んじることなく、
お伝えしたいことがいっぱいです。






《 カーペットビートル 》

ウール、コットン、のり、わた、木製パネル
71.5×53×11cm/2026


ウールを食べ、セーターに穴を開ける虫を実際の姿を参考にして、
ウールをメインに使い、家庭用編み機で編んだ作品。

本当の姿は、肉眼では小さ過ぎて分からないけど、
拡大した画像を見ると、本当に繊維が飛び出しているようになっていて、
ニットで作れそうだったので作った。

和名があまり好きになれないので、
欧米の通称名のカーペットビートルをタイトルにした。









ギャラリーに入ってまず目を引く作品。

スゴイの来ちゃった、、 


「てんとう虫みたい」と言っていただけたなら、
そういうことにしておいてもいいかな、、、と
思いながらもちゃんとご説明しております。


スピーディーに編めるのがメリットとおぼしき機械編みのはずなのに
修行のように手間のかかることを成す、、

しかもモチーフは今回の出展作家の皆さまの天敵ともいうべき「カツオブシムシ」。

(確かに「カーペットビートル」と言う方が、キミも頑張って生きているね、と許せる感じがします。。


現物にかなり忠実に作られているということで、
細部の再現においては《綱引き》や《Uncle》と通ずる作品であるといえそうですが、

そもそも勝見さんの作品世界、モチーフとの対峙の仕方がそういう目線なのだと、
これまでの作品に思いを巡らせ
ます。







喫茶室では2023年と2024年の個展をまとめた作品集を販売しています。

とくに2024年の作品集は、これ自体が一点物の作品ともいえるスペシャルな仕様。

ニットの技法や編み目、そこからの派生をどう見せていくかの展開。
ポートフォリオのファイルと併せてご覧ください。





ムイムイはあまり得意ではないのですが、、

徐々に愛おし

ニットだもの



▶勝見さんは、16(土)17(日)終日在廊です🐞



2026年5月13日水曜日

《染め織り縫う編む》星名康弘

《Tabinosoraya Presents / 染め 織り 縫う 編む》

会期    2026.05.10(日)~17(日)
休廊日 5/14(木)
OPEN     11:00~17:00 ※最終日は16時まで
________________________


4月には帆布や綿のアイテムを中心にご出展くださった星名康弘さん。
風薫る5月は、シルクのストールをメインにご用意くださいました。

生地はいずれも横正機業場さん(新潟県五泉市)の、
きめの整った、しなやかかつ丈夫な正絹。

やわらかくも張りのあるドレープや、軽やかでありながらしっとりとした風合いは、
身にまとってこそ感じていただけることと思います。

ご試着をご希望の際は、遠慮なくお声がけください。











(手前2点)シルクストール 涼風紗

《百日紅の緑葉の黒》 《インド茜の根と地下茎の赤》







星名さん曰く、しっかりと織られた生地ゆえに、このモアレ※がうつくしく現れるのだとか。
 
(仏: moiré)は干渉縞ともいい、規則正しい繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、
それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のこと


機業会社さんにとっては殊更にいうほどではない”当然のこと”であるようなのですが、
それは技術の高さが垣間見れるところでもある様子。







(手前5点)紗五本縞のシルクストール


それぞれ「莢蒾(がまずみ)」「染井吉野」「藤」など
染料の植物名が表示されています





《表裏のシリーズ》

botanical after-image



 




お客様から「写真のようですね」と言っていただくことの多い《表裏のシリーズ》。
涼風紗に植物を挟み、蒸すことで色素を写し取る技法ゆえ、二枚一対の作品です。

ストールとしても、空間の仕切りとしても。







シルクストール 涼風紗

《植物の残像》



ぜひまとってみていただきたいのはこちら、
葉っぱを縦折りにした1枚で挟み込み、そのままに色素を写し取ったストール。


色味だけでなく、自然の造形や、いのちの巡り、
やさしさも、ちから強さも、日々のたのしみごとも、まるごといただくような一枚です。


色彩は再現できていません。
実物の風合いとともに、ぜひ会場でおたのしみください。











原料の植物も展示されています



 







右)シルクストール 涼風紗
《藤の若葉の黄》



目を引く黄色は、季節によって染め上がりの色が変わるという藤の葉で染めた絹。
春の若葉は青みを帯びた若々しい黄色。

星名さんが工房界隈の葉が芽吹くのを待って採集、
開幕前夜(未明)ギリギリに染め上げてくださったストールです。







《シキヌノ》

綿/11号帆布・耳付き・シャトル織
インド藍、メマツヨイグサ/木酢酸鉄



4月の《海辺にて》にもご出展いただいた《シキヌノ》は⇒
使い込んだ風合いに染め上げた、星名さんの植物染めの布への思いが凝縮されたシリーズ。


今回お求めくださったお客様は、綿花を育てている畑に敷いて
手入れの合間にお茶をしたり、ごろんと横になったりしたいとおっしゃっていました。


風わたる綿畑、、 広がる空、、 

至福のここちよさが目に浮かびます。


いずれも暮らしの中で、自由に楽しんでいただきたい染め布です。








《 染め 織り 縫う 編む 》

出展者(出展内容)所在地 / @はインスタアカウント 

・勝見俊介(ニット)阿賀野市 @shunsuke_knit_something 
・星名康弘(植物染め)新潟市 @shokubutsuzome_hamago
・矢川実侑(パンチニードル・彫刻)燕市 @inu_071
・山川菜生(染・織)田上町  @nao_03_sato.yama


 喫茶室特別展示/高木秀俊(絵画)長岡市  @tacobozu

高木さんの作品は5月の第二弾、三方舎絨毯展(5/20~24)でも継続して展示いたします。



▶在廊日 
5/10(日)勝見、星名、山川(終日)、高木(午後~)、矢川(15時~)
5/16(土)勝見(終日)、高木(午後~)
5/17(日)勝見、星名、山川(終日)、高木、矢川(午後~)