2023年5月25日木曜日

【御礼】第8回 Pegasusの会展

2023.5.9~21に開催した《第8回Pegasusの会展》は
今年も様々な学びを頂戴しながら、無事に閉幕いたしました。




《Pegasusの会展》は、たびのそら屋にとっては唯一、固定メンバーで毎年開催する展覧会。
(全5回を予定しており今年は3年目、残るは2回です。)



猪爪彦一さんと近藤充さん、ベテラン洋画家のお二人と、30代の金内沙樹さんの三人の会は、先達が若手に教えるという関係ではなく、互いに対等で、刺激を受け合う存在とのこと。


とはいえ、沙樹さんにとってこの三人展で得るものは計り知れず、
その場に居させていただく私にとっても、学ばせていただくことの大変多い会期です。





今年も、エキサイティングな気持ちに始まって、会期末にはしみじみと、
いい展覧会でした。


それはひとえにお客様と、作家との語らいがあって感じられること。


今回は作家の皆様ご多忙で在廊日が少なく、直接お話しいただく時間は限られていましたが、作家不在時に頂戴したメッセージ、とりわけ金内沙樹さん作品へのご感想は、極力お伝えさせていただきました。


繊細で柔らかき思考は、風を受ける木の葉のように、様々な言葉に揺れ動くようですが、
模索を形にし、語らうことで、大切にしたいものを確かめているような、、、

口数少ない沙樹さんの、内に秘めたる思いを語らう言葉は、
一年ごとに力強さを増しているように感じられます。





誰しもそれぞれのペースがあると思います。

周囲がもどかしく思うことがあったとしても、
本人の中では、過ぎた時間の全てが大切な瞬間の積み重ね、、、

というようなことに、思いを馳せる会期でもありました。


私などは大変遠回りをしてきた人生で、
何者になったのか、50を越えても未だ何にも辿り着いていないように思いますが、
これまでの出来事全てが、意味のある、かけがえのない出会いであったと思います。



作家として早い遅いがあるのかどうか、
どのものさしが測るものなのか、私にはわかりませんが、

沙樹さんが、ただただ表現することの自由に向かって、

自らが自らに課した不自由から解放されるための道程を、
垣間見させていただいていると感じています。


年に一度、この会のために集まるという、歳の差の開いたお三方の思考の交差する時間でもあります。
その貴重なることを併せて思いながら、また来年を、たのしみに思います。


今年、出会ってくださった皆様には、また来年もせひ、ご高覧いただけますように。

2024年は6月開催を予定しています。





ご来場くださいました皆様、DM設置やSNS等で発信してくださいました皆様、
スケジュールを掲載してくださいました新聞・メディア各社様、
どうもありがとうございました。


*****


猪爪彦一さんは今年もご出展続きで、各地でご覧いただく機会があることと思いますが、
たびのそら屋では11月と12月の企画展にもご出展いただきます。

11月は4人展のひとりとして油絵を、
12月はスペシャルな企画展の中での版画作品をご出展いただく予定です。
そちらもどうぞおたのしみに。







  * * * 次回展覧会 * * *   


野田英世 スケッチ作品展

天気予報


2023.6.16(fry)~25(sun)


※20(tue)休廊日





6月も、大変たのしみな展覧会です。

在廊日等、詳細は改めてご案内いたします。


晴れた日も、雨の日も、

善き日でありますように。



2023年5月20日土曜日

躍動/金内沙樹

ご来訪の皆様から、今年も大変関心を寄せていただいている金内沙樹さんの作品。

たびのそら屋で拝見させていただくのは3年目ですが、毎年、随分変化します。


記載の無いものはタイトル無題、
画材はパネルにキャンバス、透明水彩とアクリル絵具使用。











先にアップした「追加作品」のトピックスで
10年前の卒業制作《双耳峰》をご紹介しました⇒




《双耳峰》作品部分

(和紙、アクリル絵具、岩絵具/2012)



あの頃のマチエールにもう一度取り組みたい
と思って臨まれた今回の出展作。


















作品の色の再現は難しく、
今回、最もお伝えできていないと感じるのがこちら。





《花》



引きで撮ると暗く写り、近くで撮ると明るくなってしまいます。
実際は、もう少し深くグレーがかった、とてもいい緑です。

か細き茎は、もやがかってかすれていますが、
くっきりと描かれた花は、確かな光をたたえている様子。







種のような

こぼれ落ちながら生まれていくような






sold out





変容していくなにかを掴まえんと

あるいは、押し寄せ、湧き上がる勢いに身をゆだねて、、、











否、ゆだねていても作品は生まれないので、


やはりどれだけの衝動があったことかと圧倒される大作。

今尚、動いているように感じられます。







先にご紹介したように、DM掲載作品は、仕上げたものの「これではない」と感じて一旦は出展を見送られた くま。
この作品あっての今回の展開だと思うと、愛おしさ増し増し。


子どものころの大切なものは、
歩む道をずっと、照らしてくれるのかもしれません。





《幼な子の夢》

(紙・透明水彩・色鉛筆)






2021年、2022年の展覧会でのご紹介記事を下記にリンクします。
これまでをご覧になられた方も、今年初めての方も、
今年の作品と併せてご覧いただき、また来年の展開をたのしみにしていただけたらと思います。


◆2022年(第7回Pegasusの会展)⇒

◆2021年(第6回Pegasusの会展)⇒

◆2021年(スピンオフ)⇒
第1回Pegasusの会展の、金内沙樹さんの出展作《陽光》(2014年)の画像を掲載しています。



2023年5月19日金曜日

BLUE of BLUE/猪爪彦一

4月の《BLUE》展は「青色」の作品だけを集めた展覧会ではなく、
心模様を表す《ブルー》にも寄り添いたいと思ってつけたタイトルでした。

今回の猪爪先生は、穏やかで明るい印象の作品を選んでくださった印象ですが、
作家メッセージに綴られていたのは、少し沈んだ、
不穏を含んでいるように感じられるものでした。




《 空 》F4


【再掲】

争いのニュースが絶えない今、
何をよりどころとして表現すればいいのかわからなくなってきている。

世情は、
いやおうなく私の制作にも影をおとしている。





《 くもり空 》F3

曇っています






《 舞台 》F4

黒の作品は1枚だけですが

月より闇、優勢か





それでも、月下に意志をあらわしたる ひとのあり





肩に 何か青き… 鳥? 

あるいは青き魂の揺れたるあり





月夜の確信






《 たまごのある風景 》F0


はじまりを内包するたまご






《 塔 》SM



多出展で多作の猪爪先生の手元には、常に描きかけの作品があり、
「たまたまそのタイミングで仕上がったもの」を出展しているとおっしゃるので、
私たちは ”自由に“ 味わえばよいのですが、


(メッセージにはあのように書かれていましたが)明るい色彩が多いでしょうか?とお尋ねすると、

「(気持ちは)そうでもないのですけれどね… 」とおっしゃいました。






《静寂》F10



BLUE。。。

私は、その言葉に猪爪先生の「BLUE」を見た思いです。







何を描いたか、どうしてこの色になったか、あまり解説されず、
お客様が尋ねても「このようになりました」とおっしゃいます。


月の裏側を想像するように、
猪爪先生が描く塔の後ろ側にも、しばしば思いを巡らせます。

円筒や、キューブや、角柱がよく登場しますが、
作品《静寂》の塔は、これまでにないフォルム。


私は密かに、ハリボテ的な、薄い形状なのでないかと思っています。
堅牢に見えて、実は脆いのではないか、、、


、、、と想像する自由を、猪爪先生は、いつも与えてくださいます。






《 遠くの虹 》15×10㎝



卯年生まれということで、描かれているのはうさぎですか?とお尋ねしたら、
「のようなものです」とのこと。


うさぎではない、かもしれない様子。


特定のなにか、ではないものを描かれます。


小さき者たち、
何かを、訴えているでしょうか。


謎は謎のままに

どの作品についても多くは語られませんが、そんな中で、
今の心はこうですと、メッセージに寄せてくださった言葉を受け止めます。








名残り惜しき会期末です。

第8回 Pegasusの会展

2023.5.9(火)~21(日)
OPEN 11:00~17:00 

◆猪爪彦一/油彩
◆金内沙樹/透明水彩・アクリル
◆近藤充/アクリル・テンペラ・岩絵具

※最終日は昼頃より作家3名在廊で、16時にて閉幕です。



2023年5月18日木曜日

BLUE /猪爪彦一

4月の展覧会タイトルは《BLUE》でした。

私の中では「青」と言えば猪爪彦一さんでもあります。

「Pegasusの会展」では「青」をリクエストしたわけではありませんが、

届いております。猪爪先生の、様々な「BLUE」✨


《BLUE》展の続きをいただいた気持ちです。





《空》F4





《道》F0










《散歩》F3





そして今回の大作であり、
新たな色彩を用いられた新作。





《静寂》F10





ひたひたのBLUE

青く染まりたる大地






2023年5月17日水曜日

まなざしのゆくえ/近藤充

「古昔のものに惹かれる」という近藤充さんが独自のテンペラ混合技法で描くものは、
旅の記憶と、いにしえの教会の壁画を思わせる物語。





 右《良き贈りもの》
 上《古きまなざし》





                 
 右《奏楽使》
 下《嵐吹くとも》



壁画シリーズには華やかな饒舌さを感じるのに対して、旅の記憶の作品は、街の喧騒と沈黙、

相反する気配に耳をすまし、目を凝らすうちに、いつしか見知らぬ世界へといざなわれるような心持ちになります。





《車窓に》

変形M8号




《店先》S0号




《赤い靴》S0号





《夜へ》

変形M6号






《ある駅にて》

変形M6号




ガラス越しの実体と
おぼろげな写り込みの実体

描かれた幾重もの層に、様々な時の流れを感じます。



重なって見えても、同じ時を共に過ごしたともいえず、

すれ違うだけであったとしても、確かに共に在りし瞬間の、ひと、ひと、もの、街角、、、



確かなるものはいずこ


すでにここにはないものを思う微かなさびしさは

古書に挟まれた手紙の行方を、ふと思うような






《ある古書店》S0号



近藤充さんは、長年、エッグテンペラの技法を用いてこられましたが、
岩絵具とアクリル絵具を混ぜることで理想的な状態にたどり着いたのは、
ようやくここ数年のことだとおっしゃいます。


「Pegasusの会展」では、そうした年月の積み重ねについても聞かせていただきがなら、

かつてアメリカ、中南米、ヨーロッパ各国を旅した記憶を辿るのと同じように、
目の前の近しい存在や、互いの変容、限りあるものを慈しんでおられるのではないかと、

作家のまなざしのゆくえに思いを巡らせる第8回の会期です。





赤い壁の喫茶室に西日が差す頃は、また一段と
不思議な懐かしさと、時空が混ざるような特別な時間になります。


______________

第8回 Pegasusの会展

2023.5.9(火)~21(日)
OPEN 11:00~17:00 

※18(木)は休廊日です。ご注意ください。

◆猪爪彦一/油彩
◆金内沙樹/透明水彩・アクリル
◆近藤充/アクリル・テンペラ・岩絵具

※最終日は昼頃より作家3人在廊で、16:00にて閉幕です。