2021年5月31日月曜日

「Pegasusの会展」スピンオフ

番外編をひとつ。

今回の「Pegasusの会展」では、作家それぞれのずいぶん前の作品を拝見させていただくという、
予定外のうれしいことがありました。





猪爪先生の在廊日、お客様が、所蔵する猪爪彦一・近藤充、両氏の作品を計3枚、ご持参くださいました。


猪爪先生の人物画2枚は、作家本人にも制作年が定かでなかったのですが、
とりわけ肩から上を描いた肖像画の「少女」は、表情といい空気感といい、目が離せなくなるような、とても印象的な作品でした。


お客様によると、ご家族との共有スペースに飾る絵と、自室で一日の終わりにほっと(うっとりと)魅入る絵があるそうで、この作品は後者とのこと。

なんて豊かな一日の終わりでしょうか。



近藤先生の作品は、お話には聞いていた「色」のある時代の作品で、2003年に制作された人物画でした。


今回の出展作は、近年たどり着いたとおっしゃる統一された色調で、被写体は遠い記憶のような、にじんだアウトラインで描かれていましたが、

20年ほど前の作品は、、、、 基調となる色彩こそ今に通ずるものでしたが、華やかで、ゾクリとするようなうつくしさと繊細さ。



先述した猪爪先生の肖像画も、一見穏やかに見えますが、意思のあるまなざしはどこかクールで、何を思うひとか、ちょっとぞくっとする面も感じます。


20年前にはもう出会われていた両氏の ”どこか通ずる” とおっしゃるところを、この旧作からも感じたり、近藤先生の描く ”空気感” の表現の変化を、わずかな断片から垣間見せていただいたような気がしたり、とてもありがたく、うれしいことでした。





そのことを受けての最終日、それならばと、近藤先生が
「第1回 Pegasusの会展」に出品された金内沙樹さんの作品を持ってきてくださいました☆


その8年前の作品がまた素晴らしく、、、

あやしく、うつくしい、今回とはまた随分異なる作品世界が、
最終日のお客様の関心を集めていたのですが、



何が大事かといえば、

そのことが、沙樹さんに何かをもたらした様子。。。



どのように今後に反映されていくのかは彼女のみの知るところですが、

何かが始まろうとするケハイが、窓の外の茂りゆく緑たちに重なって感じられました。




絵を描くことは、個人の表現の探究ではあるけれど、


こうして世に出し、観ていただくことで、
ひとがひとと関わることで、
描いたひと、出会ったひと、
それぞれの中に生まれるもののあること、


そのことより大事なことは

私にはあまりないかもしれなくて。。。


このときのことを書き記しておきたいと思うのでした。





金内沙樹「陽光」
(2014年)





右は10年ほど前に沙樹さんがおかあさまのために描いたという
愛犬「アトム」

そのまなざしの、なんとやさしく、いとおしいこと




「Pegasusの会展」は、来年も5月に開催することが決定しました。

この続きをみせていただけることのうれしさ。

皆様にもたのしみにしていただけたらと思います。




友人がつぼみを織り交ぜて届けてくれた薔薇のブーケ。
気温が高い日にぐんぐん開いていく様子にもハラハラした会期でした。

たくさんのひとに見ていただきたくて、願いを込めて切り戻し、活け直し、
大雨でお客様が少ない日にも、私だけはたっぷり愛でて、
いい香りねと褒める!(*ノωノ)♡


願い届いて会期後半、気温が下がったのも幸いし、
芍薬のごとく花びらが幾重にも重なった見事な大輪が、
最終日までお客様をお迎えしてくれました。


四方八方に感謝。



2021年5月21日金曜日

金内沙樹さん

新星現る、といった心境で拝見しています。

作品は全てパネルに
キャンバス・アクリル・クレヨン・色鉛筆使用。




「夜」

F4(33.3×24.2㎝)

sold out



「星」

F4(33.3×24.2㎝)



夜は無限の宇宙

星は大地





「影」

M8(45.5×27.3㎝)





「影」(作品部分)





黒い影に目をこらせば

細部はこんなにも繊細でゆたかな世界





「都市」

F6(41×27.3㎝)

sold out



見る人それぞれが、異なるものを見出す沙樹さんの世界


「都市」に数字を見るひとあり

構図ついて問うひとあり



「細部を描くのがたのしくて、こうなりました」と


あまり多くを語らない沙樹さんの、


「たのしくて」 の言葉。






「卵 Ⅰ」

F0シリーズ





「結晶 Ⅰ」





「卵 Ⅱ」

sold out




「結晶 Ⅱ」



「針」



沙樹さんの作風は、今回、ずいぶん変化したとのことです。

展覧会の時だけ会うという「Pegasusの会」の猪爪さん、近藤さんはもちろん、
制作途中は一切見せてもらえないというご家族も、大変驚いておられました。





「月の瞳」

30×30㎝



猪爪先生曰く、前は色彩も描いているものも「暗~い絵」だったとか。
猪爪先生にはその世界も魅力的だったそうですが、

心境の変化は、コロナ禍とも連動したのかどうか、


大きく脱皮した様子。






「わにの夢」

F8(45.5×38㎝)



作風を変えるのは、怖いことだったでしょうね、
とおっしゃったお客様がおられました。


怖いことだったか、
ワクワクすることだったか、、、
わかりませんが、


周囲が驚くほどですから、

挑まれたのだなぁ、、、と思います。



ここからはきっと、どんどん、トライできますね。


猪爪先生と一緒に在廊された折、デジタルでイラストも描く沙樹さんならではの”絵画”の表現があるのではないか、と話題になりました。


それってどんな!!


私には思いもつきません。

沙樹さんだけが見つけることのできる、沙樹さんだけの道。


これからの探究、沙樹さんの中から生まれてくるものを、
私もたのしみにさせていただきます。












◆金内沙樹 / KANEUCHI  Saki


初めまして。
アクリル絵の具とクレヨン、色鉛筆などを使って、動物や不思議な生き物をモチーフにした作品を展示しております。
子供の頃に心惹かれていた、幽霊や不思議な怪物たちの物語は、いつも形のない不安や孤独を包み込むような優しさを含んでいました。
今回はその物語を読んだ頃の、思い出の断片を描くような気持ちで制作しています。
お化けのような、獣のような、人間のような形を楽しんでいただけたら嬉しいです。


【略歴】

1991年 長岡市生まれ
2010年 デザインフェスタ(東京ビックサイト)【同’11参加】
2012年 「さじゅ」展(新潟・GALLERY 蔵)季刊SSイラスト掲載
2013年 「子羊画廊の羊展」(新潟・羊画廊)
2014年 「Pegasusの会展」(新潟市美術館市民ギャラリー)【同’15・’17・’18・’19開催】
2017年 新潟県美術展 入選

日本アニメ・マンガ専門学校卒業


* * * * * * * * *


「Pegasusの会展」は23(日)まで。

23日は近藤充さんと金内沙樹さん在廊で、16時に閉幕です。

◆換気と衛生管理につとめて営業しています。
館内ゆったりと広がりながら、ゆっくりとおたのしみください。



【御礼】「Pegasusの会展」

2021年5月11日から23日まで開催いたしました「Pegasusの会展」は
無事に閉幕いたしました。




またひとつ、味わい深い展覧会の記憶が、この場所に刻まれました。

どの展覧会も、その時々の忘れがたい出来事があり、出会い、感動、教訓、、、
悲喜こもごもの思い出があるのですが、


今回もまた様々なドキドキとハラハラと、うれしいことの数々。





猪爪彦一  「青い空」作品部分


折しも、5/12より長岡市を対象に県の「特別警報」が発出され、難しい会期となりましたが、


会場としてやるべきことは従来と変わらず、

作家陣も、様々な立場やお考えがおありだと思うのですが、
動じることなくどっしりと、都合のつく限り在廊してくださいましたこと、


そしてどんな悪天の日にもご来場くださるお客様がいてくださることに、
毎度ながら励まされた会期でした。






近藤充 古絵シリーズ


初めてお迎えした「Pegasusの会展」は、新たに体験・体感することがいくつもありました。


猪爪先生がおっしゃる「対等な仲間」の意味について、


年齢や経歴は違えども、それぞれの世界と個性の求心力があって「会」が成り立っていること、実務上は近藤先生が ”要”(かなめ)となってくださっている様子でしたが、メンバーの関係性においては、誰もが欠くことのできない ”要” なのだと感じました。


それと同時に、初めてお会いした近藤先生は、どれだけのひとを、時代を、技を、垣根なく、つないでおられる方だろうか… とも思いました。


様々なことが、めぐり合わせだとおっしゃる近藤先生。


今回、私もめぐり合わせていただけたことが、とてもうれしいです。




近藤充「背」

旅立ちの前にそっと語られし絵姿の残像



猪爪先生も、近藤先生も、それぞれに大変な探究者でありながら、他者に向けての語り口とまなざしのおおらかなこと、


その厳しさのあるやさしさに見守られながら、

のびやかに、身震いしながら挑戦のできるひとの居ること、、、


私もそのひとりですが





金内沙樹「都市」


新鮮な感動をもたらし、挑戦と探究の姿をみせてくださった金内沙樹さんとの出会いは、また格別なことでした。


印象的な出来事は、もうひとつトピックスを改めて書きたいと思いますが、

今まさに変化の起きようとする場に、居させてもらえたことのありがたさ。


「会」としての魅力と、個々の作家の魅力、葛藤、追究、、、

様々を感じさせていただいた「Pegasusの会展」でした。





金内沙樹 「 卵Ⅰ」


貴重なご縁と機会をくださった猪爪彦一先生と、近藤充先生、金内沙樹さんに、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。


そして、こうした社会状況の中でもご来場くださいました皆様、
場と機会を活かしてくださり、本当にありがとうございます。


展覧会情報をご掲載くださいました新聞各社様、
情報提供にご協力くださいました事業所ならびにSNSで発信してくださいました皆様にも、
こころから厚く御礼申し上げます。


本当にどうもありがとうございました。


*****

今回、気になりながらもいらっしゃれなかった皆様からも、心の内に様々なお気遣いをいただいていることと思います。

「メンバーの二人から案内状をもらったのだけれど今回は残念ながら、、、」とお電話をくださったご年配の方もおられました。

皆様それぞれの思いで、このコロナ禍をお過ごしのことと思います。

なにはともあれ、それぞれの場所で、深呼吸しながら、元気にまいりましょう☆


次回展覧会は6月下旬より、




6/22(火)~7/4(日)※6/24・30休廊日

川田淳 × 森島明子

「二人のそら展」


たびのそら屋では初出展となります写真と日本画のお二人による展覧会です。

雨でも曇天でも、きっと素敵です。


詳細はまた改めてご案内いたします。



2021年5月20日木曜日

デッサンの向こう側

デッサンとは「物体を平面に白黒で描く」こと(=素描)




近藤 充

「猫と金魚 Ⅰ」

アクリル・岩絵具・テンペラ / 変形SM


専門学校でデッサン講師をつとめる近藤充さんに、マンガやアニメを志す若者に教えるのはどんな感じですか?とお尋ねしたところ、

専門学校の学生たち(に限らないけれど)みんな、デッサンは「写真のように描くこと」だと思っていて(私もです(;'∀')


写真のように描けることが「上手い」ことだと思い込んでいて(ハイ!(;'∀')


それはこれまでの美術教育の中でそう思わされてきたということなのだけれど、
デッサンの目的はそれでない、ということを伝えることから始めなくてはならない、とおっしゃいます。


今やマンガもアニメもイラストもデジタルで描けるので、「デッサン不要」論すらあるとのことですが、

果たしてそうなのか、、、否、


ということで「日本マンガ・アニメ専門学校」(通称JAM)にはデッサンの授業があり、
近藤充さんという、ワールドワイドな美術家をお迎えしているという、、、
なんて素敵な専門学校☆


学生たちが近藤先生の存在や ”ものの見方” に触れる経験は、技術の習得に影響するだけでなく、人生の稀なる出会いになるのではないかと想像します。





「猫と金魚 Ⅱ」

変形SM


猪爪彦一さんも、写真のような絵はつまらない、とおっしゃいます。

ある程度訓練すれば写真のように描けるひとは山ほどいるが、実物を超える「絵画」として極めることのできるひとはごく僅か。多くのそういう絵ではないものを志すひとにとって、大事なことは「上手に描く」ことではなく「描きたいように描けること」。

デッサンはそのためのもので、その先こそが大事なのだ、と

両者、明解に一致しておられました。





「背」

変形S4


「上手い絵」と「いい絵」はまた別で、写真のようにデッサンできないからといって、
「自分は絵が描けない」と思わなくてよいです、と断言される猪爪さんは、

御年90歳のお客様との会話で、

音楽の道を究めるためには、とにかく早く始めなくてはならないと言われるけれど、

絵の道はいくつからでも始められます(キッパリ)

とおっしゃっていました。


齢90になっても健康で、やりたいことがあり、若き友がいて、新たな出会いも引き寄せ、
行きたいところへ行き、美味しい食事や、たのしい会話ができる、、、

お越しくださるたびに、その方の人生を眩しく、出会えたことを尊く、思っているのですが、


きっと ”デッサンの向こう側” におられるのだと、、、



「描きたいように描く」は、

「生きたいように生きる」に、通ずるのではないかと思うのでした。





猪爪彦一

「星の涙」

油彩・F10(作品部分)



Pegasusの会展は23(日)まで。
OPEN 11:00~17:00

◆最終日は近藤充さんと金内沙樹さんが在廊で、16時にて閉幕です。



2021年5月19日水曜日

猪爪彦一さん

ご本人や作品については、これまでも熱く語らせていただいてきたので、
今回は「Pegasusの会」のメンバーとしての猪爪先生のお話を。




「青い空」

油彩・F20



猪爪彦一さんと近藤充さんは、かつて新潟市にあった「千石ギャラリー」の公募展受賞者で構成された「白の会」で会友となって以来、志向に共感するところもあって、親しくしてこられたお仲間とのこと。

「白の会」が終了する折、これで終わるのは惜しいということで、お二人で立ち上げたのが「Pegasusの会」。(猪爪さん命名)


メンバーとして声を掛けたのは、名だたる受賞歴あるベテランではなく、これから世に羽ばたこうとする若者たち。当時も今も厳選2名。
(今回は出展を見送られましたが、もうお一人、男性メンバーがいます。)





(左)奏でる  (右)あやとり


近藤充さんは、新潟市にある「日本アニメ・マンガ専門学校」(略称JAM)のデッサンの講師を務めていらっしゃることもあり、若手クリエイターとの接点がおありです。


アニメやイラストを描くことが好きで進学して来た学生たちに「デッサン」を教えることについてのお話は、とても興味深いものでした。


その授業で学生が描いたドローイングやタブローの中に時折、これは、と気になる作品があるとのことで、

近藤さんの眼にとまったおひとりが、結成当時からのメンバーである金内沙樹さんです。



金内沙樹さん作品一部

また改めてご紹介します



猪爪彦一さんは「Pegasusの会」のことを話題にするたび、若手メンバーのことを「なかなかいい絵を描くのですよ」と褒めるのですが、「自分たちは ”仲間” なのです」と幾度もおっしゃいます。


それは、年長者が「教え」、若いひとが「教わる」という関係ではなく、貪欲に絵という表現に向かう者として、対等な関係であるということ。


一ファンである私は、敬意と親しみを込めて「猪爪先生」とお呼びしていますが(文中では意図して呼び分けています)ご本人は皆様もご存知のとおり、いつも大変控え目で、展覧会の審査員をしたり公民館の絵画教室などに呼ばれていくことはあっても「先生」として教える立場ではない、というふうにおっしゃいます。


そのお方が、ことPegasusのメンバーのことになると熱く推すのは、大上段から”評価”してのことでなく、自身に刺激を与える存在として、ともに展覧会を開く関係であることのよろこびが込められているのだと、今回、改めて感じました。



「塔」

油彩・F0




「塔のある風景」

油彩・F4



「風の舟」

油彩・F0


近藤充さんも、金内沙樹さんにとってはいつまでも「先生」であるとしても、先生の側は、沙樹さんはもう教える「生徒」ではないのだと、ぐっと気持ちを抑えて見守っておられるご様子です。


それは、若者にとっては厳しいことでもあります。


センセイたちには、見えていることがある。


でもそれは、自らが気づき、体感・体得していくしかないこと。


それを沙樹さんもわかっていて、

毎回緊張しながら、展覧会に挑んでおられるのだと思います。


今回は沙樹さんの作品がずいぶん変化したとのことで、
これまでを知る皆様、一同に驚かれています。

そんな変化をうれしく、眩しく感じながら、
ふたりの ”先生” は、この展覧会を大切にしておられるのだと思います。






「異族」

油彩・SM


2020年秋に開催した個展「猪爪彦一展 -異郷- 」の折、
銅版画の新作として大好評だった「異族」シリーズ。
今回、油彩となって登場です。






「虹」

70×65㎜


喫茶室にはオブジェのような作品が3枚。
小品ながら存在感。
重厚な額に負けない絵のチカラ。






「広場」

60×60㎜





「樹のある風景」

65×60㎜




Pegasusの会展は23(日)まで。
最終日は近藤充さん、金内沙樹さん在廊で16時にて閉幕です。


*****


◆猪爪彦一 / INOTSUME  Hikoichi

ペガススの若い仲間との展覧会は、ちょっと気持ちが楽になります。
いつもとは別のステージに立つ感覚になる。
いいかげんにしておくというのではなく、新鮮な雰囲気で作品を制作することができ、新たな表現に挑戦するきっかけになったりもする。


【略歴】

1951年 新潟市生まれ
1974年 第29回行動美術展  初入選【以後毎年出品】
1978年 第33回新潟県展  版画県展賞
1981年 第36回行動美術展  行動美術賞
1982年 第25回安井賞展【以後8回出品~’92】
      第37回行動美術展  安田火災美術財団奨励賞
1984年 第1回青年絵画展(日本橋三越)【以後5回出品】
     第3回安田火災美術財団奨励賞展  新作優秀賞
1990年 第1回西洋の眼現代絵画展(日本橋三越)【以後5回出品】
1995年 シリーズ新潟の美術 ’95(新潟県民会館ギャラリー)
             画集「かぐわしき風の中で」(新潟日報事業社刊行)
1997年 安井賞展入選作家4人展(新潟・雪梁舎美術館)
1999年 7の視点展(東京・井上画廊)【以後9回出品】
2004年 新潟の作家100人展(新潟県立万代島美術館)【同’06出品】
2005年 にいがたの美の系譜(新潟県民会館ギャラリー)
2007年 漂泊の位置展(東京・ギャラリー風)【以後毎回出品】
2009年 ドローイングフィフティーン(東京・あらかわ画廊)
      個展「猪爪彦一の世界展 ー原風景を求めて」(弥彦の丘美術館)
2010年 銅版画作品集「夜の風景」(羊画廊刊行)
     「物語の絵画」(新潟県立万代島美術館)
2011年 個展「猪爪彦一の世界 幻想の銅版画展」(弥彦の丘美術館)
     「新潟の画家たち」(新潟県立万代島美術館)
2012年  「みんなでつくるコレクション展」(新潟市美術館)
             「びじゅつのあそびば」(新潟県立近代美術館)
    「GUN 新潟に前衛があった頃」(新潟県立近代美術館)
2013年 「風ノナマエ:20展」(東京・ギャラリー風)
    「こころのかたち」(新潟市美術館)
2014年  「第17回 木の会」(東京・鈴木美術画廊)【第1回より出品】
               個展・油彩(豊栄地区公民館区民ギャラリー)
               個展・版画(柏崎・遊文舎)
             「Pegasusの会展」(新潟市美術館市民ギャラリー)【同’15・’17・’18・’19開催】
             「コレクション展 さがしてみつけて」(新潟県立近代美術館)
2017年    個展(池田記念美術館)

行動美術協会会員・新潟県美術家連盟副理事長・県展運営委員

近藤 充さん②まなざし

開催中の「Pegasusの会展」は会期後半(~5/23まで)

5/19(水)は休廊日です。
              






「依る」

アクリル・岩絵具・テンペラ
変形6号





「光移」

アクリル・岩絵具・テンペラ
変形10号




「窓辺」

アクリル・岩絵具・テンペラ
変形6号




「花日和」

アクリル・岩絵具・テンペラ
変形8号




ガラスに映った姿のような

薄いヴェールの向こうのような



見えるようで見えない

時のかなたの記憶のような作品たち



****


これらの作品は、いわゆる「美人画」を描いているわけではなく、漂う空気、ケハイのようなものを描きたいのです、とおっしゃいます。


表現したいもののためのテンペラであり、色調であり、岩絵具であり。


もっと色を用いた頃もあったとお聞きしていたところ、お客様が所蔵している2003年の近藤充作品を持参して見せてくださいました。


基調のカラーはやはり赤みを帯びた土に近い色調なのですが、色香のごとく施された色彩の、
細密で、つややかで、華やかなこと! 


その時すでに「ほの暗さ」も「かげり」も含まれていたのかもしれませんが、
その頃は、夢のようなきらめきが、”ヴェール” だったのかもしれません。


そこに描かれたひとも、瞳を閉じていました。





ずっとみていましたか



まなざしに

ぞくり



2021年5月18日火曜日

近藤 充さん①古絵

いずれもアクリルと天然の岩絵具を用いたテンペラ画。
四角いパネルの支持体を、不規則にガタガタと造形したのちに描かれます。


”造形”も好き、という近藤充さん。
モノとしての存在感を持たせつつ、あくまでも「絵」として、というさじ加減の妙。





古絵「三賢者」


 
 


中世ヨーロッパの中でもロマネスクの時代の雰囲気が好きで、その空気感を込めた「古絵」のシリーズ。
まるで崩れかかった教会の壁画を剝がしてきたかのような佇まいです。


触れたら更に欠けてしまいそうな儚げな様子に、お求めになるお客様も飾り方を思案されるところ、近藤さんは、テンペラ画は年月を経るにつれてどの画材よりも丈夫になっていきます、とおっしゃいます。


パネルの周囲も楽しんでいただきたい作品なので、箱額での額装を希望されるお客様もおられるとのことですが、作家本人は、額装せずに直に撫でたり触ったりしたらいいのですよ、と。


もしも手の脂で染みができたり、もしも落として欠けたとしても、それがその作品の歴史になるのです、とおっしゃる言葉に、近藤さんが目指している絵画を感じます。






「勇者」





「預言者」





「使徒」




学生の頃より「テンペラ画」を描いてきたという近藤充さん。
随分と、手間も時間もかかる技法のようです。

中世ヨーロッパに始まる、このいにしえの技法は、油彩の登場とともに古臭く非効率的なものとして廃れてしまったとか。


けれどその手間と時間を注いだ作品は、時を経るごとに堅牢になり、色褪せることなく、時代を超えて生きてゆくものであるとのこと。



作家メッセージを改めて読むと、近藤さんが大切にしておられることと、表現したいものと、「テンペラ画」というもの、そして略歴に垣間見るこれまで歩んでこられた道が、みんなひとつのものとしてつながっていることを感じます。


まだまだワクワクと、何処へ向かわれるのでしょうか。

その道の途中でお会いできたことが、本当にうれしい今展です。



*****

◆近藤 充 /  KONDO  Mitsuru


世界の時間が短くなり、未来への号令が声高になる中、古典に惹かれます。
未知なる未来の可能性にワクワクしながらも、時を経たものがいとおしい。
時間が降り積もったような気配、モノとしての存在感と儚さの相反する要素を作品にと。


【略歴】

1964年 新潟市生まれ
1987年 アリゾナ州立大学留学・中南米遊学
1990年 新潟芸術美術展  連盟大賞
1992年 伊丹大賞展  大賞(兵庫県伊丹市・伊丹市立美術ギャラリー)
           伊藤廉記念賞展(名古屋・日動画廊)
1995年 千石大賞展  大賞(新潟・千石ギャラリー)
1997年 銀座大賞展 2席(東京・正光画廊)
1999年 個展(新潟・ギャラリー小さな森)
2000年 フィレンツェ賞展  特別賞(新潟・雪梁舎美術館)
2001年 個展(新潟・羊画廊)【同 ’03・’05・’07・’09・’11 個展】
2002年 花の美術大賞展  受賞(兵庫県加西市)
2003年 新潟の洋画家6人展(弥彦コミュニティセンター)
2004年 新潟の作家100人展(新潟県立万代島美術館)【同’06出品】
          風の会選抜展(イタリア・レカナーティ)
2005年  「萬代橋十景展」(新潟日報社主催)
2009年  「記憶のかたち展」(新潟県立万代島美術館)
2010年   個展(新潟・ギャラリー万代島)【同’13個展】
2014年  「Pegasusの会展」(新潟市美術館市民ギャラリー)【同’15・’17・’18・’19開催】
2015年  「箱展」(加茂・あとりえきっか)
2016年   個展(新潟・ギャラリーあらき)【同’18・20個展】
2018年   風の会展(イタリア・フィレンツェ)
2019年  「あたらしいかたち展」(新潟市新津美術館)

新潟大学大学院修了
無所属・新潟県美術家連盟理事