ご本人や作品については、これまでも熱く語らせていただいてきたので、
今回は「Pegasusの会」のメンバーとしての猪爪先生のお話を。
「青い空」
猪爪彦一さんと近藤充さんは、かつて新潟市にあった「千石ギャラリー」の公募展受賞者で構成された「白の会」で会友となって以来、志向に共感するところもあって、親しくしてこられたお仲間とのこと。
「白の会」が終了する折、これで終わるのは惜しいということで、お二人で立ち上げたのが「Pegasusの会」。(猪爪さん命名)
メンバーとして声を掛けたのは、名だたる受賞歴あるベテランではなく、これから世に羽ばたこうとする若者たち。当時も今も厳選2名。
(今回は出展を見送られましたが、もうお一人、男性メンバーがいます。)
近藤充さんは、新潟市にある「日本アニメ・マンガ専門学校」(略称JAM)のデッサンの講師を務めていらっしゃることもあり、若手クリエイターとの接点がおありです。
アニメやイラストを描くことが好きで進学して来た学生たちに「デッサン」を教えることについてのお話は、とても興味深いものでした。
その授業で学生が描いたドローイングやタブローの中に時折、これは、と気になる作品があるとのことで、
近藤さんの眼にとまったおひとりが、結成当時からのメンバーである金内沙樹さんです。
金内沙樹さん作品一部
猪爪彦一さんは「Pegasusの会」のことを話題にするたび、若手メンバーのことを「なかなかいい絵を描くのですよ」と褒めるのですが、「自分たちは ”仲間” なのです」と幾度もおっしゃいます。
それは、年長者が「教え」、若いひとが「教わる」という関係ではなく、貪欲に絵という表現に向かう者として、対等な関係であるということ。
一ファンである私は、敬意と親しみを込めて「猪爪先生」とお呼びしていますが(文中では意図して呼び分けています)ご本人は皆様もご存知のとおり、いつも大変控え目で、展覧会の審査員をしたり公民館の絵画教室などに呼ばれていくことはあっても「先生」として教える立場ではない、というふうにおっしゃいます。
そのお方が、ことPegasusのメンバーのことになると熱く推すのは、大上段から”評価”してのことでなく、自身に刺激を与える存在として、ともに展覧会を開く関係であることのよろこびが込められているのだと、今回、改めて感じました。
「塔」
油彩・F0
油彩・F4
「風の舟」
油彩・F0
近藤充さんも、金内沙樹さんにとってはいつまでも「先生」であるとしても、先生の側は、沙樹さんはもう教える「生徒」ではないのだと、ぐっと気持ちを抑えて見守っておられるご様子です。
それは、若者にとっては厳しいことでもあります。
センセイたちには、見えていることがある。
でもそれは、自らが気づき、体感・体得していくしかないこと。
それを沙樹さんもわかっていて、
毎回緊張しながら、展覧会に挑んでおられるのだと思います。
今回は沙樹さんの作品がずいぶん変化したとのことで、
これまでを知る皆様、一同に驚かれています。
そんな変化をうれしく、眩しく感じながら、
ふたりの ”先生” は、この展覧会を大切にしておられるのだと思います。
銅版画の新作として大好評だった「異族」シリーズ。
今回、油彩となって登場です。
70×65㎜
重厚な額に負けない絵のチカラ。
最終日は近藤充さん、金内沙樹さん在廊で16時にて閉幕です。
1951年 新潟市生まれ
1978年 第33回新潟県展 版画県展賞
1982年 第25回安井賞展【以後8回出品~’92】
第37回行動美術展 安田火災美術財団奨励賞
1984年 第1回青年絵画展(日本橋三越)【以後5回出品】
1999年 7の視点展(東京・井上画廊)【以後9回出品】
2005年 にいがたの美の系譜(新潟県民会館ギャラリー)
2007年 漂泊の位置展(東京・ギャラリー風)【以後毎回出品】
2009年 ドローイングフィフティーン(東京・あらかわ画廊)
「物語の絵画」(新潟県立万代島美術館)
2011年 個展「猪爪彦一の世界 幻想の銅版画展」(弥彦の丘美術館)
2012年 「みんなでつくるコレクション展」(新潟市美術館)
2017年 個展(池田記念美術館)