2023年4月12日水曜日

安立貴美枝③パレイドリア現象

【パレイドリア現象】 (pareidoria)

不定形なカタチから、いままでの記憶にあるものが見えてくる心理現象。
たとえば、雲を見ていたら顔が見えてきたりすることもある。
『アタマとカラダでわかるデザイン』杉崎真之介 著より



 


《 まるでゾウリムシ 》

アクリル絵の具、色鉛筆/430×520㎜(2013)



貴美枝さんは、この本で「パレイドリア現象」という言葉に出会って、
そういうことだったのかと、これまで見てきたものに合点がいったとのこと。
(著書は参考図書として喫茶室に展示しています。)


先にご紹介した作家メッセージにも書かれているように ⇒
貴美枝さんが描くのは「パレイドリア現象のおかげで、見つけて幸せな気持ちになったもの」たち。


果たして彼女は何処に「ゾウリムシ」を見出したのか。。。





《もりのたまご》

アクリル絵の具、色鉛筆/250×291㎜(2013)






《 あしもとの夜空 》

アクリル絵の具、色鉛筆/291×250㎜(2016)






《 Evidence tree ” めばえ ” 》

アクリル絵の具、色鉛筆/250×291㎜(2016)




貴美枝さんの作品は抽象画と思われがちですが、実はリアルな風景、実体験を描いておられます。

描かれた世界のひとつひとつを伺うと、彼女のまなざしの向かうところドラマがいっぱい。

でもそれは私たちが生きている世界でもあること、

この世界は、驚きと、感動と、きらめきで満ちていることを、教わります。





《 おばあちゃんの漬物石 》

アクリル絵の具、色鉛筆/291×250㎜(2013)







こちらの作品も色彩がうまく再現できていないのですが、
淡いみどり色の地の部分の、彫刻刀で削ったみたいなガタガタの感じが素敵だったり、

”漬物石”のこの煌めきは、まさかの乳酸菌たちかしら?

そんなおばあちゃんの漬物は絶対に美味しいに決まってるね、
それとも逆かな、美味しいから漬物石も輝いて見えるのかしら、、、 両方かしら、、、


見える世界と、見えない世界のことを、あれこれ愉しく想う貴美枝さんの世界。







この透明感を出すための技法は独特で、絵の中にある際立って見えるポイントは、彼女の蒐集の中から出番を得たフォルム。


再現された記憶の層は、時間と手わざの地層でもあるように感じるのですが、版画を制作してきた彼女にとって、「待つ」時間を要する手間のかかる工程は全く厭うものではないとのこと。


目線や作業のミニマムさと、何かの境界をおおらかに超えているような不思議さがあります。







今回の【BLUE】展には「青」が印象的な4名の作家にご出展いただきました。


ですが「青い」作品だけを集めた展覧会にはしたくなく、様々な色がある中の「青」、いろいろな意味合いの「BLUE」に出逢いたく、


「青」の世界に、うつくしい色彩がともに在ってほしいと願ってご依頼したのが貴美枝さんでした。



作品内容は全て出展作家に一任しています。

結果、4名の描く「BLUE」の世界は、なんと多彩で、やわらかく、うつくしく、、、


お客様とともに、色彩に浸るように魅了されています。








喫茶室には冒頭の参考図書の他、貴美枝さんが2016年から広告オブジェの制作で携わっておられる毛糸メーカー「Puppy」の毛糸カタログも展示しています。


毎年春と秋に発売される見本帳の表紙になっているのが貴美枝さんが手がけた「広告オブジェ」。

デジタルではなく毛糸などを用いて実作品を作るとのこと。



編んだり刺繍で描いた部分もご自身によるもの。

いやもう、どういうことですか。すごすぎます。



「Puppy」のHPトップ画面に貴美枝さんの広告オブジェ✨ ⇒


本社での展示会の様子がアップされています。
広告オブジェの実作品は、本社の他、各展示会会場を巡回するとのことで、
カタログの表紙になるだけでなく、旅するオブジェなのでした✨