描く植物の大半を自分で育てているという秀美さん。
在廊日にはお客様と植物の話題に花が咲きます。
「スカシユリ」作品部分
(水干/半切/2020)
蕾、開花、花びらがこぼれおちて、花芯だけになるという、いのちの巡りを同じ1枚の画面に描くというのは、日本画の構図として従来からあるのだとか。
でもそうした意匠を取り入れたというだけでなく、秀美さんの絵には、発芽して、蕾がつき、開花して散り、また芽吹くのを、実際に育てて観察しているからこそ描ける植物の個性や、醸し出すケハイがあるように感じられます。
「山百合」
(水干 / 半切 / 2020)
この山百合だけは、ご自宅では環境が合わないのかうまく育てられなくて、同じ与板町のお知り合いのお庭で描いたとのこと。
「見せてもらった時にすでにすべて満開だったので蕾は描けませんでした」とほほ笑む秀美さん。四輪が咲き揃った迫力が、山の上にそびえるような構図から伝わってきます。
構図ありきではなく、花、ありき
いのち、そこに在りき
金色を背景に用いた力強い1枚は、百合の王様「山百合」に対してだけでなく、緑の手=「グリーンサム」を持つ大先輩への敬意や親愛も、込められているように思われます。