2024年7月24日水曜日

手塚千晴/みずとつちの芸術祭/作品集

スピンオフとしてご紹介いたします。

「中庭」の手塚千晴さんは、只今新潟市内で開催中の芸術祭に出展中です。





《(仮想)みずとつちの芸術祭-新潟-2024 》

▶会期 7月13日(土)~9月23日(月祝)

▶時間 9:00~21:30(最終日は15時まで)

▶メイン会場 新潟市芸術創造村・国際青少年センター(ゆいぽーと)2階

▶サブ会場 市内7か所とヴァーチャル会場あり


関連イベント等詳細はホームページをご参照ください。
https://2024.mizutsuchi.com/about/





このたび初めて平面作品の板絵に取り組まれた千晴さん。


これまでのような立体の大作をつくるためには物理的に広い場所や、
集中できる時間的な条件も必要となるため、
子育てを大切にする今は、今の環境でできることを模索しておられます。

その制約があることで、大切にしたいもの、追求したいものが、
より鮮明にみえてくることもあるでしょうか。






こちらは《三人展 中庭》で販売されていた2冊の作品集の表紙。


ふふふと、頬がゆるむようなタイトルの文字は、
長男の樹くんがようやく文字を書き始めた頃に、頼んで書いてもらったとのこと。


漢字のことはおそらくまだ知らない、絵を描き写した絵としての文字。

ぐんぐん成長して再び戻ることのない、かけがえのない瞬間の記録であり記憶は、
極めて個人的なものといえますが、


どんなデザインされた文字より素敵に思えて、
中身もさることながら、その字に惹かれて買い求めました。


こうして全くの他人にも特別な意味を抱かせることのできるこの文字は、
すでにひとつの Art として昇華されたものなのだと思います。






「みずつち」では、どんな作品に出会えるでしょうか。

新潟市を含む越後平野の「過去を知り、現在(いま)を考え、未来を創る」が基本理念とのこと。

これまでは行きそびれておりましたが、今年は初めて出かけたいと思います。





総勢20組以上が出展。↑はパンフレットのごく一部、
千晴さんのコメント掲載部分です。



今年は「越後妻有 大地の芸術祭」も開催年。


その前に宿題いっぱい!🌈🏃💨💨💨





2024年7月23日火曜日

【御礼】三人展中庭

2024.7.9~21に開催いたしました《三人展 中庭》は、無事に閉幕いたしました。

天候にも恵まれた最終日は、作家三人在廊のもと、たくさんの方が駆けつけてくださり、
尽きぬ語らいが続きました。





作家たちと同世代の若い方々や、元気いっぱいの小さい方のご来訪が多かったこともあり、
きらきらと、眩しい会期でした。

手塚千晴さんと高畑杏子さんの作品によって、”山” を感じる空間を堪能できたのも印象的でした。

「山に来させてもらったような気持ちです」と、帰り際におっしゃったお客様もおられました。


本格的な登山をしないひとでも、大自然の中で感じるであろう感動や心地よさを、
経験的に知っていたり、憧れとして胸に抱いていたり。

作品を通して、こころの奥から呼び覚まされるようなものが、
あるのだと思います。


それは ”山”であったり、それ以外のことであったり。





加納いずみ《盤石却》


加納いずみさんが作品で表した時間の単位「却」(コウ)のことは ⇒
私も含め、多くの方にとって初めて聞くものであったようですが、
感想を伺えた方の中でおひとりだけ、「盤石却」の話をご存知の方がおられました。


子どもの頃に聞いたその例え話が面白くて、今でも時々思い出していたと、
それをこんな風に見せてもらえるなんてと、感動の気持ちを聞かせてくださいました。






一体、どんな時に「盤石却」のことを思うのか、、、


ひとのこころの中は、計り知れなくて、

3人の作品を介して、様々な思いが観る人の脳裏を巡ったことを想像します。







ありそうで、なかなか無い「三人展」だと思いました。


目の前の山のリアルな景色の魅力を伝える高畑杏子さんの写真と、

身近に眺めてきた、こころの拠り所ともいえる山容やふるさとのイメージをカタチにする
手塚千晴さんの木彫、

そして、哲学のようなつかみどころのない概念をカタチに表す、
加納いずみさんのコンセプチュアルな作品。


異なる表現が同じ空間に、やわらかな調和を醸しながら在りました。


私たちは三人の世界を行き来しながら、様々な感覚が、軽やかに、
躍るように反応するのを味わったのではないかと思います。



これからまた個々の活動を重ねていかれることと思いますが、
それぞれの作品の魅力が増していくにつれ、時折、三人が集う「中庭」のあることの醍醐味が、
これまでとはまた違う意味も持ちながら、より一層感じられるのではないかと、
今からたのしみに思う気持ちです。


「中庭」の皆様、素晴らしい展覧会を、ありがとうございました。







それぞれに、様々を得た会期であったご様子でした。


ひとえに、お越しくださり、愉しんでくださいました皆様、
SNS等で関心を寄せてくださいました皆様のおかげです。


情報発信にご協力くださいました事業所ならびに新潟日報紙様にも、
こころより御礼申し上げます。


三人の恩師の先生方にも、ご多用中、遠路お越しいただきました。
あたたかい励ましの数々を、どうもありがとうございました。









 






そして、今回の喫茶メニュー「旅コーヒー」では、新発田市の「三角フラスコ」さんに、
三人展をイメージしたスペシャルな「中庭ブレンド」をご用意していただきました。


お客様には「大変個性的なお味ですよ」(飲みやすいブレンドもご用意していますよ)と前置きをしながらラインナップをお伝えしていたのですが、多くの方が「ではその個性的なお味を」とご用命くださり、初めての味わいに興味を持ってくださる様子がとてもうれしいことでした。


いつもなら、梅ソーダーやジンジャーソーダーにもオーダーが分散する夏の会期ですが、
最終日を前に「中庭ブレンド」がまさかの sold out になるという予想を超えた人気っぷりは、、、


三角フラスコさんと「中庭」ファンの方が多かったことはもとより、
いつもご利用くださる皆様にも、今回だけのお味をたのしんでいただけたことの表われかと
うれしく思います。







最終日に駆けつけてくださいました、三角フラスコの良緒さん、
旅コーヒーをたのしんでくださいました皆様、

ありがとうございました






たびのそら屋はこれにて夏季休廊いたしますが、次回展覧会はすぐです!

旅コーヒー紹介のトピックスにも予告を掲載しておりました⇒
詳細はまた改めて。

皆様、よい夏をお過ごしください🌻✨






See you soon ☆




2024  SEPTEMBER EXHIBITION -LIFE

2024.9.4 wed ~15 sun
closed 9/6,11
open 11:00~17:00
last day 11:00~16:00


🌼nuunuudadada 三橋妙子/ 洋服(山梨県)9/4・5 @

nuunuudadada


🌼Ovejita やざわしのぶ / ストール(千葉県)9/4・5 @

ovejita_fieltro

🌼シロツメ舎 タナカマミ / ガラスビーズ装身具、コモノ(新潟市)9/15 他 @

shirothume



◆表記は、ブランド名・作家名/ 出展内容(居住地)在廊予定日 @Instagram


2024年7月21日日曜日

手塚千晴/素材の声を聴く

《 三人展 中庭 》

2024.7.9 tue ~21 sun
Open   11:00~17:00 ※最終日は16:00まで

🌻加納いずみ(インスタレーション) 
🌻高畑杏子(写真) 

🌻手塚千晴(木彫) 

🌿「中庭」のInstagram@ nakaniwa.awa



《薫風》

桐・岩絵具




木の節(フシ)や割れがそのままに生かされた作品が印象的な、手塚千晴さんの作品。

先の作家紹介で記載したコメントには


~年輪を持つ、木という生きた素材との対話を軸に
自分なりのアプローチで新潟を彫り出しました。 


と書かれています⇒






このたび初めて手掛けたという岩絵具を用いた板絵は、
桐と欅の古材が用いられています。





作品部分/欅




桐の木の節が鳥みたいな作品




先日お知らせしたNSTの「ユースタッチ」内の特集、「にいがた夢つうしん」はご覧いただけたでしょうか。

手塚千晴さんへの取材に絡めて、搬入時の三人と、営業中にご来訪のお客様へのインタビューが紹介され、5~6分のコーナーですが、作家たちの思いを伝える素晴らしい内容でした。


その中で、千晴さんがインタビューに答えていました。
木も、子どもと同じで思うようにならない、と。


木の種類による特徴だけでなく、製材して立ち現れてきたその木の個体としての特性を、
なるべくそのままに生かすことを心がけたことが感じられる作品たち。






《灯台のある山》

杉 sold out



今回は大作のマケット(縮尺模型)として制作された小さい山たちも展示販売されているのですが、

その中のひとつ《灯台のある山》は、なめらかな面ではなく、
えぐれたような節のある側をオモテ面としていることに作家性を感じます。


角田山の真横を通るシーサイドラインを走ればわかるように、
山とはまさにこうした表情を見せるもの。


この杉の木の、この部分と出会ったからこそ生まれた再現性のない姿に
心底、惚れ惚れ。

(開幕初日に来られた山男さんのもとに旅立ちます🤣 内心、くーーー








《早苗月》




奥に見える《波紋》と共にウッドデッキに展示しているのは、
以前、アルミの円盤の上に設置した状態で発表されたという《早苗月》。


役割を果たし終えたということで、今回は連山単位で手放すとのこと。

どのように置いてもらってもよいですと、おおらかに箱に入れて持ってきてくださった作品です。


晴れた日には毎日、落ち葉を掃いて、《波紋》の傍らに連山を円形に集合させるのは、
加納いずみさんの《人生カレンダー》に〇をつけ、《盤石却》のスイッチを入れるのと同じく、開幕前の特別なひと時。






この作品も、節づかいが絶妙です。

えぐれた部分のある山塊を選んでくれたのは、やはり山登りをする方々でした。






sold out

こちらも山な方のもとへ





《波紋》



これまでは大作をつくることが多かったため、作品を販売するのは初めてという千晴さん。

自分の彫刻は自己満足なのではないか、あとは薪になるだけではないか、と
冗談のように笑うその奥に、様々な思いのあることを感じます。


大丈夫。


大切にしているものは、観る人に、ちゃんと届いておりますよ。






《小さい木の家》






晴れた日の夕方は、クローズしてからがマジックアワー。

遠き 山に 日は落ちて...

と心の中で口ずさみながら、山影に見惚れて過ごしました。






名残惜しき会期末を過ごし
ご紹介を書ききれぬまま迎える最終日。







会場の作品と、作家との語らいをどうぞおたのしみください。

午後には作家揃って在廊で、16時にて閉幕です。





《曇天》


雲の下に山 雲の上は晴れ




2024年7月20日土曜日

加納いずみ/行為の蓄積

《 三人展 中庭 》

2024.7.9 tue ~21 sun
Open   11:00~17:00 ※最終日は16:00まで

🌻加納いずみ(インスタレーション) 
🌻高畑杏子(写真) 

🌻手塚千晴(木彫) 

🌿「中庭」のInstagram@ nakaniwa.awa







《人生カレンダー》

紙、ほか







作者の誕生日から平均寿命までが綴られたカレンダーは、
人生の残り、に意識を向けて時間を可視化した作品です。















平均寿命を表わす年月の帯の、どのあたりに今、居るのかと、
鑑賞者も自身の人生を重ね、思いを巡らせるかもしれません。









私は、まずは色とりどりの丸が付けられた「今日」の蓄積に、
我にも彼にも、よく生きてきましたね、の労いを。






そして、平均寿命を迎える頃のいずみさんには、
どうやら間違いなく会えないのだろうな、、、と思いながら、
カレンダーの終わりの西暦を眺めます。


そこにあるのは寂しさではなく、

彼女たちは、それくらい未来を生きるひとたちなのだ、という
勢いのある芽吹きを見るような眩しさであるように思います。






ですがそれ以前に、私はこのカレンダーを作成すること自体に、感服するのです。


前のトピックスでご紹介した「却」(こう)を調べる中で「億劫」(おっくう・おっこう)という言葉も出てきました。

作家とは、「億劫」にひるまないタイプのひとのことだと思っています。


カレンダーのハンコがあって、それを押していくだけです、とおっしゃるいずみさんは、
制作過程を「作業」に落とし込んでいくのが好きとのこと。

喫茶室奥の棚に展示されたドローイングも、そうした行為の蓄積の作品のひとつ。





《無題》

額装ペン画





ペンで引いた線に定規を重ね、白地の側に新たな線を引く、というルールを決めたら、
あとは極力感情を加えず無作為に、機械的に動作を繰り返し、その結果を見る、という作品。


画面の下に行くにつれて線が傾斜していくのは、左側の方が筆圧が大きいのでしょうか、
インクの滲みが太くなり、その軌跡に忠実に定規を当てた結果の傾斜だと思われます。


機械的であることを志向しながら、どうしても再現不能な、自らの手跡を感じる
ランダムな結果が導き出されることを、彼女はどう眺めているのでしょう。


そうしたことこそが、彼女の作品の核心であるように思いますが、
裏腹に、無機質なものへの憧れは募るものなのでしょうか、、、







いずみさんのかわいらしいキャラクターと相まって、ジタジタしている様子をつい
微笑ましく感じてしまいますが、

喫茶室窓辺の机の上にあるこれまでの作品を紹介した資料の中には、
卒業制作の頃の切実な気持ちが綴られていました。






卒業と同時に、もう作品制作はしないと決めて、彫刻の道具などは全て後輩に譲ったとのこと。

2019年に同期の二人と再会したのを機に創作を再開したものの、様々な素材を用いるため
作品に統一感がないように感じられ、「木」や「石」といった自分の代名詞になるような特定の素材がほしいと、つい先日は話しておられましたが、、、


私は今回の作品を拝見し、
いずみさんはすでに持っている、と思いました。


それはもう、記されていたのではないかと。


















名残惜しき会期末。

最終日は、手塚千晴さんは昼前から、午後には《中庭》に3人揃って
16時にて閉幕いたします。







2024年7月19日金曜日

加納いずみ/時の可視化

三者三様の作品の魅力を、愉しんでいただいている《三人展 中庭》。

ギャラリーに入ってすぐに対面する加納いずみさんの作品は、

ほぉ、、、と立ち止まって眺めるやいなや、禅問答が始まるような作品です。




いずみさんの出展作品は、「インスタレーション」(ざっくりと空間展示)と表記されていますが、
コンセプチュアル・アート※(概念芸術)寄りの志向で制作しておられます。

素材を用いて芸術作品を作るという技術面より、作品製作の背景にある発想や思想に重きを置く芸術





右)《芥子却》(けしこう) 1/20000バージョン

 左)《盤石却》(ばんじゃくこう) 短縮バージョン







仏教用語で永い時を表わす「却」(コウ)という時間の単位についての二つのたとえ話を、
縮小・短縮して表わしたふたつの作品。


作品解説は語り過ぎないことに苦心するとのことですが、
その絶妙なボリュームと、わかりやすさに関心します。


難しい話になりがちなところも軽やかに縮尺して示し、
私たちはコンセプトについての共通認識の土台を得た上で、

それでも残る謎に思いを巡らせ、作品と、居合わせたひととの語らいに
向かうことができます。






《 芥子却 》 1/20000バージョン

芥子の実、木箱、ピンセット








《盤石却》 短縮バージョン

モーター、布、石  ほか




真面目さと、ユーモアと、シュールな可笑しさと、うつくしさ、

河原の石や芥子粒など、きわめて再現性の低い自然の素材をメインに用い、
そこここに作家の生の手仕事の痕跡が残されているにもかかわらず、

実は「もの派」が好きで、レディメイド(既製品を用いたアートの文脈)に憧れているという、

相反するようにも感じられる要素が、絶妙な配分で散りばめられた作品世界。





《観ることについて》

額縁写真、石 ほか






作家の自問につられて鑑賞者も自問する作品。


「作品を鑑賞するとき、私が見ているのは作品なのか、写真の表面なのか、キャプションから得る作品情報やコンセプトなのか、作品から早期される個人的な思い出との結びつきなのか、、、」


私は、作品になるまでの過程を見ようとして(知りたいと思って)いることが多いようで、

この作品でもっともハッとしたのは、作家が注いだ時間、を「見た」と感じた瞬間です。


額装された写真部分は、デジタルを扱う作家であれば居ながらにして、たちまちに作れると思われますが、本作は、

石を用いた過去の作品⇒を記録した写真⇒を額装して撮影⇒したのを現像に出して⇒
また額装して撮影⇒したのを現像に出して、、、と


「却」ほどの時間ではないにせよ、作家が実直に手を動かし、足を運び、
形にしていくために、注がれた時間のあることを、

作者以外の方々との語らいの中で(つまり作者が解説しないところで)
見えたように感じた瞬間に、ひとつの感慨がありました。


《芥子却》や《盤石却》、次でご紹介する《人生カレンダー》は
ストレートに時間を可視化することを目的とした作品であることに対し、
《観ることについて》は作家にとっては異なるスタンスの作品であるようなのですが、


図らずも、時間の経過、時の流れといった、目に見えないものをみせることが、
共通の伏線になっているのが、いずみさんの作品世界なのではないかと感じたり、、、


鑑賞者は往々にして、作者の意図せぬところをみているかもしれない、
という一例の報告のような所感になりました。





《人生カレンダー》

紙、ほか






《 三人展 中庭 》

2024.7.9 tue ~21 sun
Open   11:00~17:00 ※最終日は16:00まで
Closed 12 fri, 17 wed

🌻加納いずみ(インスタレーション) 在廊:7/13、18、21(各日午後)
🌻高畑杏子(写真) 
7/11、14(13:30~)20、21(13:00~)
🌻手塚千晴(木彫) 7/10(11:00~14:00)、14(13:00~)、21(11:00~)

🌿「中庭」のInstagram@ nakaniwa.awa