「旅コーヒー」のご紹介で、猪爪彦一さんの「黒」のことに少し触れました。
赤を下に塗った、セピアに近い、やわらかな「黒」のファンが多いことは、
今回の出展作への反応からも改めて感じるところです。
《風景》
F6/油彩・キャンバス
《夜の風景》
F50(作品部分)
中央に飾られた50号の大作は圧巻ですが
今回、特筆したいのはその左隣、F6号の作品です。
《風景》
F6/油彩・キャンバス
新潟市界隈の方ですと、この山容と裾野の景色にピンと来る方も多いのではないでしょうか。
はい、
「弥彦山」と「はさ木」のある田園をイメージした作品です。
以前、「弥彦を描く」という公募展の審査員を務めた際に、出品を求められ、
スケッチに出たのち制作されたとのこと。
猪爪さんの作品世界は常に動いており、過去に発表した作品は、また加筆され、
登場するものが増えたり減ったりしながら、新たなステージへと送りだされます。
本作はこのたび、天にも地にも、大幅に赤みが足されたとのことでした。
2024.6.1
長岡から新潟方面へ向かう道中の麦畑ごしの弥彦山
「6月、見渡す限りの麦秋である」
免疫学者・多田富雄「からだの声をきく」(平凡社/2017)に書かれていた
麦のアポトーシス(!)に遭遇して感動した日
弥彦山は日本海に面した弥彦山塊の主峰。
どの山もそうであるように、見る角度によって山容は変わります。
私のふるさと・見附市からは、弥彦山と、隣り合う多宝山の頂が離れて裾野が広がったМ字型の双耳峰に見えるのですが、新潟市の猪爪先生のご自宅から弥彦に向かう道中は、峰がこのように重なって見えるとのこと。
そのままの写実ではなく、脚色がなされているとのことですが、むしろ
作家のフィルターを通すと、馴染みの景色がこのように描かれる、ということに、
”絵画”なるものの自由を感じるとともに、
何をどう描こうとも猪爪彦一世界になる、ということに、改めて感銘を受けます。
通常は、頭の中に描いた世界の何処かを描く、というスタンスでいらっしゃるので、
実在の山や景色が描かれるのは、きわめて珍しいこと。
このような”引き出し”が、おありだったなんて、、、
宝箱の中のひとつを、見せていただいた気持ちです🎁✨
先生が描く故郷の景色を、もっと拝見したいです。
厳かで、うつくしさに息をのむような夜。
決してやさしいメルヘンではない、
人知の届かぬ、圧倒的な存在を内包している黒。
そのルーツは、今のように街灯の無かった子ども時代に体験した、夜の田園の、
”本当の闇” なのだそうです。
「弥彦山」は、地域の多くのひとにとって特別な山。
「おやひこさま」とも呼ばれ親しまれていますが、
越後国一宮・彌彦神社の聖域であり、修験者の山でもあります。
赤い月に照らされた越後平野と、神々しき彌彦山。
もちろん「The 弥彦山」と思わず、自由におたのしみいただけたらと思います。
ですが、猪爪彦一さんの作品と、弥彦山のこの景色をこよなく愛する方には、
格別な一枚ではないかと思い特筆させていただきました。
よき出会いがありますように。
猪爪彦一さんは最終日、6/30在廊予定です。
喫茶室の作品もお見逃しなく。
《 窓 》
F0/油彩・キャンバス
第9回 Pegasusの会展
2024.6.18(火)~30(日)
OPEN 11:00~17:00 ※最終日は16:00まで
CLOSED 21(金)・26(水)
◆猪爪彦一/油彩・キャンバス(6/18・30 在廊)
◆金内沙樹/油彩 (6/29・30 両日午後から在廊)
◆近藤充/アクリル・テンペラ・岩絵具(6/29・30 両日13時頃から在廊)