2024年6月29日土曜日

金内沙樹②両翼

「身体」をテーマに描いたという、金内沙樹さんの今回の作品。


F0号の小さなキャンバスに丁寧に描かれた世界は、
果たして広大なのか、あるいはミクロなのか、

抽象のようにも、具象のようにも見え、、、 いえ、見えるようで、見えなくて、

鑑賞者も、靄の中に彷徨います。





《 表象Ⅲ 》

F0/油彩・キャンバス






《 表象Ⅱ 》




《 表象Ⅰ》





沙樹さんは、肌の表面の皺や、皮下の骨などが気になる様子。

資料をよくよく観察、吸収したのち、写実ではなく湧き出るイメージを描くとのこと。


モチーフに注目しがちですが、画面に皺のような細かなマチエール(質感)が生み出されていることも、
ぜひ実作品でご覧いただきたいです。







《 表皮Ⅰ 》





《 表皮Ⅱ 》





《 表皮Ⅲ 》





《 両翼 》

P0/油彩・ジェッソ・パネル




前のトピックスでは、標(しるべ)と題された作品のことに触れましたが、

翼も、 両方、

みつけたのでしょうか。


ぜひ今年の沙樹さんの作品をご覧いただき、
来年、第10回目となる《Pegasusの会展》を、たのしみにしていただけたらと思います。

_____________


第9回 Pegasusの会展

2024.6.18(火)~30(日)
OPEN   11:00~17:00 ※最終日は16:00まで

◆猪爪彦一/油彩・キャンバス
◆金内沙樹/油彩  
◆近藤充/アクリル・テンペラ・岩絵具

❖ 6/29(土)午後から、近藤充さん、金内沙樹さん在廊予定

❖ 6/30(日)お三方在廊で、16時にて閉幕です



2024年6月28日金曜日

金内沙樹①標(しるべ)

 第9回 Pegasusの会展

2024.6.18(火)~30(日)
OPEN    11:00~17:00 ※最終日は16:00まで
CLOSED  21(金)・26(水


◆猪爪彦一/油彩・キャンバス(6/18・30  在廊)
◆金内沙樹/油彩  (6/29・30  両日午後から在廊)
◆近藤充/アクリル・テンペラ・岩絵具(6/29・30  両日13時頃から在廊)






《種子の夢》

M3/油彩・キャンバス





《Pegasusの会展》は、たびのそら屋での開催は4度目となります。
毎回、印象を大きく変えてきた金内沙樹さんの作品は、このたびも大きく変容しました。


「種」や「たまご」のような、なにかを内包しているようなモチーフは
これまでも登場してきましたが、画風が飛躍的に変化しました。


初めてご覧くださる方は、こんな絵を描く若い方がいたのね、と感心してくださったり、
これまでもご覧くださっている方々も、初めて出会ったような印象を受けておられるご様子です。



❖今回は油彩のみ(一部、ジェッソを使用)で描かれています。
実作品をぜひ、ご覧ください。





《境界》

M3/油彩・キャンバス




過去には、タイトルの付け方に悩んでおられたこともありましたが、
そこにも変化を感じました。


今回、タイトルとして新たに記されたもののひとつは、「標」(しるべ)。


これから目指すところの目標として、
自らが、ここぞと決めたところに立てる指針を描いた作品である、
ということを命名したことに、これまでとは違う心持ちが表れているように感じます。







《 標Ⅰ》
しるべ


F8/油彩・キャンバス






《 標Ⅱ 》


F8/油彩・キャンバス








作品の多くは暗い色調で、輪郭もおぼろげですが、
一貫したスタンスを感じる今回の展示作。


明るい作品、伝わりやすい作品を描いた方がよいのか、というこれまでの葛藤も、
乗り越えたのかもしれません。


間近で観ると、とても細やかに描き込まれた画面に対峙し、
目を凝らしても見えそうで見えない、けれど見ようとしてしまうこの気持ちは、

その向こうに描きたいものが、確かに在る… 
それをなんとか掴もうとする、ということと、似ているかもしれません。


沙樹さんはそれを掴んだのではないか、とも感じる2024年の《Pegasusの会展》です。






《 浮遊 》

M0/油彩・ジェッソ・パネル







《 花 》

F0/油彩・キャンバス







《 跡 》

F0/油彩・キャンバス







《 淡光 》

P3/油彩・キャンバス

sold out




❖金内沙樹さんは、6/29・30 午後から在廊予定です。


2024年6月27日木曜日

近藤充/オルビエート 追想

学生時代から、世界各地を旅してこられた近藤充さん。
独自のテンペラ混合技法を用いて、過ぎし日の追想を描かれます。


「描くことは旅をするようなもの」とおっしゃいます。


今年の《Pegasusの会展》では、イタリアの 丘の上の街・オルビエートの旅路です。

作家紹介のトピックスに記載した作家コメントもご参照ください⇒




《 オルビエート 遠望 》

24.0×66.0㎝


・作品はいずれも、アクリル・岩絵具・テンペラ混合技法
・色彩は再現できていません。質感や佇まいなど、ぜひ実作品をご覧ください





《古絵-福音者》
いにしえ ふくいんしゃ

23.5×17.5㎝





《 古絵-園 》
いにしえ その

47.0×14.5㎝

sold out




今回、新たに注目を集めているのは、作品が収められたお手製の額。
絵画と同じく、いくつもの手数を注ぎ、時を経た風合いに仕上げられています。






《 言祝ぐ 》
ことほぐ

18.8×12.6㎝





《 戴冠 》

22.5×16.8㎝

sold out





《 ピエタ 》

16.8×11.3㎝




作品にはテンペラならではの堅牢さがあるので、額装せずにそのまま飾っていただいてもよいし、
万が一落としても、案外、丈夫です、とおっしゃる近藤充さん。


逆に、この味わいを生かせる額をあつらえるのは、なかなか大変なことではないかと思うにつけ、
今回の額装は、作品の世界がさらに完成されたような、うれしい仕様です。


しかも「オルビエート 大聖堂」を画像で検索していただくと、、、
額のフォルムには、そのイメージがデザインされていることがわかります。


中の絵は、額の内寸に合わせて後から描かれたとのことで、制作上の都合もあったご様子ですが、
まず、かの大聖堂を思いながら額を形づくることから、この追想の旅は始まったのでした。


額は絵画を引き立たせる装飾の役割のみならず、
これもまたオルビエートの追想から生まれた ”作品” であり、
絵画と一体となって意味を成す、特別な存在であることに思い至ります。







今回の近藤充さんの作品はこれまでになくウキっとします。
ご覧くださる方、お選びくださる方々も、たのしそうなこと✨😊


これまでに拝見してきた、しっとりとした心象が現れた作品群とはまた異なる様相は、
オルビエートの旅が、よほど心躍るものであったことの現れでしょうか。。








《 窓辺Ⅰ 》

24.5×17.5㎝

sold out





《 窓辺 Ⅱ 》

28.8×16.5㎝

sold out




先の作家紹介の文末でも書きましたが⇒
「弥彦の丘美術館」では只今、「近藤 充 展-追想の旅」を開催中です⇒(~7/28)


あちらをご覧になった後にお越しくださったり、
後日、弥彦も拝見します、とおっしゃるお客様も多数いらっしゃり、
いつにも増して、ファンの皆様の熱気を感じています。

弥彦の個展はまだまだ続きますが、
たびのそら屋での《Pegasusの会展》は終盤です。(~6/30まで)


近藤充さんは、6/29・30の午後から、金内沙樹さんと共に在廊予定。

6/30(日)最終日は、お三方在廊で16時にて閉幕です。


どうぞおでかけください🌈



2024年6月26日水曜日

猪爪彦一②飛行舟

第9回 Pegasusの会展

2024.6.18(火)~30(日)
OPEN    11:00~17:00 ※最終日は16:00まで
CLOSED  21(金)・26(水


◆猪爪彦一/油彩・キャンバス(6/18・30  在廊)
◆金内沙樹/油彩  (6/29・30  両日午後から在廊)
◆近藤充/アクリル・テンペラ・岩絵具(6/29・30  両日13時頃から在廊)

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喫茶室には小さい作品を展示しています。

ギャラリー側の大きい作品は圧巻の素晴らしさですが、
猪爪彦一さんの油彩は、小品であっても、遠目にも存在感があります。








《 飛行舟 》

油彩・キャンバス/10×10㎝









《 土の塔 》

油彩・キャンバス/12×8㎝







《 日の出 》

油彩・キャンバス/7×7㎝

sold out






《 壁のある風景 》

油彩・キャンバス/10×15㎝









前のトピックスでは、現実世界の景色(弥彦山)が描かれているという点で、
猪爪作品の中では珍しいと思われる《風景》をご紹介しましたが⇒



《飛行舟》のように、
飛んでいる存在が描かれているのも、珍しいのではないかと思います。








《 飛行舟 》
油彩・キャンバス/10×10㎝





猪爪ワールドでは、鳥や蟲が羽ばたくことはほとんどなく、
息絶え、地に埋もれかけていることもしばしばです。


月や太陽は浮かび、煙たなびき、
球体や立方体は宇宙の塵のごとく遊泳していますが、


「舟」となると、
近年描かれた作品では、朽ちたり、沈みかけていることが多いように思います。






《 方舟 》

油彩・キャンバス/F6







《 風景 》

油彩・キャンバス/F3





人物が、無重力のような状態で闇間に浮かんでいることはしばしばありますが、
そのひとの意志で浮かんでいるかどうかは、定かではありません。



猪爪先生は、「飛行舟はガスで浮かびます」とおっしゃいました。


描かれた《飛行舟》は、ガスを用いて「浮かぶ」
あるいは「飛ぶ」という意志を乗せていると思われます。



それは「文明」ということであるかもしれないし、
日頃描いておられる世界の、前の時代なのか、後の時代なのか、、、

モチーフの真意はわかりませんが、


作家は、この舟を飛ばせたのでした。



初めて飛行舟を見た時の
わくわくした気持ちを思い出しながら眺めています。









《 青い空 》

油彩・キャンバス/F0







《 古都 》

油彩・キャンバス/SM





空の色も様々。
いつも、新しい色彩への挑戦を織り交ぜてくださる《Pegasusの会展》。

猪爪彦一さんは、6/30(日)最終日に在廊くださる予定です。



2024年6月25日火曜日

猪爪彦一①弥彦山

「旅コーヒー」のご紹介で、猪爪彦一さんの「黒」のことに少し触れました。

赤を下に塗った、セピアに近い、やわらかな「黒」のファンが多いことは、
今回の出展作への反応からも改めて感じるところです。





《風景》

F6/油彩・キャンバス




《夜の風景》

F50(作品部分)





中央に飾られた50号の大作は圧巻ですが 
今回、特筆したいのはその左隣、F6号の作品です。






《風景》

F6/油彩・キャンバス



新潟市界隈の方ですと、この山容と裾野の景色にピンと来る方も多いのではないでしょうか。

はい、

「弥彦山」と「はさ木」のある田園をイメージした作品です。


以前、「弥彦を描く」という公募展の審査員を務めた際に、出品を求められ、
スケッチに出たのち制作されたとのこと。


猪爪さんの作品世界は常に動いており、過去に発表した作品は、また加筆され、
登場するものが増えたり減ったりしながら、新たなステージへと送りだされます。


本作はこのたび、天にも地にも、大幅に赤みが足されたとのことでした。




2024.6.1

長岡から新潟方面へ向かう道中の麦畑ごしの弥彦山

「6月、見渡す限りの麦秋である」

免疫学者・多田富雄「からだの声をきく」(平凡社/2017)に書かれていた
麦のアポトーシス(!)に遭遇して感動した日



弥彦山は日本海に面した弥彦山塊の主峰。
どの山もそうであるように、見る角度によって山容は変わります。


私のふるさと・見附市からは、弥彦山と、隣り合う多宝山の頂が離れて裾野が広がったМ字型の双耳峰に見えるのですが、新潟市の猪爪先生のご自宅から弥彦に向かう道中は、峰がこのように重なって見えるとのこと。

そのままの写実ではなく、脚色がなされているとのことですが、むしろ
作家のフィルターを通すと、馴染みの景色がこのように描かれる、ということに、
”絵画”なるものの自由を感じるとともに、
何をどう描こうとも猪爪彦一世界になる、ということに、改めて感銘を受けます。


通常は、頭の中に描いた世界の何処かを描く、というスタンスでいらっしゃるので、
実在の山や景色が描かれるのは、きわめて珍しいこと。


このような”引き出し”が、おありだったなんて、、、

宝箱の中のひとつを、見せていただいた気持ちです🎁✨


先生が描く故郷の景色を、もっと拝見したいです。





厳かで、うつくしさに息をのむような夜。

決してやさしいメルヘンではない、

人知の届かぬ、圧倒的な存在を内包している黒。



そのルーツは、今のように街灯の無かった子ども時代に体験した、夜の田園の、
”本当の闇”  なのだそうです。



「弥彦山」は、地域の多くのひとにとって特別な山。

「おやひこさま」とも呼ばれ親しまれていますが、
越後国一宮・彌彦神社の聖域であり、修験者の山でもあります。


赤い月に照らされた越後平野と、神々しき彌彦山。



もちろん「The 弥彦山」と思わず、自由におたのしみいただけたらと思います。



ですが、猪爪彦一さんの作品と、弥彦山のこの景色をこよなく愛する方には、

格別な一枚ではないかと思い特筆させていただきました。


よき出会いがありますように。





猪爪彦一さんは最終日、6/30在廊予定です。

喫茶室の作品もお見逃しなく。




《 窓 》

F0/油彩・キャンバス



第9回 Pegasusの会展

2024.6.18(火)~30(日)
OPEN    11:00~17:00 ※最終日は16:00まで
CLOSED  21(金)・26(水


◆猪爪彦一/油彩・キャンバス(6/18・30  在廊)
◆金内沙樹/油彩  (6/29・30  両日午後から在廊)
◆近藤充/アクリル・テンペラ・岩絵具(6/29・30  両日13時頃から在廊)

2024年6月24日月曜日

旅コーヒー/六月の鹿さん

喫茶室では、毎回異なるお店のコーヒーを、「旅コーヒー」と称して
ご紹介しながらご提供しています。

旅先で出会った、また訪ねたいお店を中心に、地元界隈のお店や、
出展作家からのご紹介で、初めてお取り寄せさせていただくこともあります。


《Pegasusの会展》の会期中は、2020年以来、4度目のご登場となります、
盛岡市にある自家焙煎珈琲のお店「六月の鹿」さんのお豆をご用意しています ⇒







「NOIR」(ノワール)は六月の鹿さんの定番ブレンド。


夜の森のようなぬくもりのある黒 そんなイメージをもってつくりました 苦すぎず 酸味も控えめに ボリュームのある甘みのあとに ほどよい苦みが余韻にのこる 六月の鹿の定番ブレンドです









マスターの熊谷さんがこのブレンドに込めた「黒」のイメージは、
私の中で、猪爪彦一さんの「黒」と重なります。







猪爪彦一《夜の風景》

F50/油彩・キャンバス





猪爪彦一《風景》

F6/油彩・キャンバス




黒といえば、今回の金内沙樹さんの画面も印象的です。

様々なものを内包する「黒」。






金内沙樹《種子の夢》

M3/油彩・キャンバス




金内沙樹《浮遊》

M0/油彩・ジェッソ・パネル








ブレンド「NOIR」に注目しながらも、実は一番好きなのは、
インドネシア・マンデリン。


一般的に、脂がにじむような照り照りに焙煎されていることが多い印象のお豆ですが、
六月の鹿さんのマンデリンは、深すぎない焙煎度合いなのが好みです。



ガツン、としたパンチを与えるのでなく、

極めて静かに、


とどまることのない季節のめぐりの、瞬間の愛おしさ、、、

そんな気持ちとともにいただきたいコーヒーです。






「旅コーヒー」のメニューでは、しばしば「エチオピア比べ」をしますが、
今回は、エチオピアの国内産地は異なりますが、通常のコーヒーと、カフェインレスのもの
両方をご用意しました。


エチオピア・モカ・ハラールは通常のカフェインを含有したコーヒー。

エチオピア・モカ・シダモは、液体二酸化炭素抽出法でカフェインを除去した
カフェインの残留率0.1%のデカフェです。


デカフェですが、中深煎りで、しっかりと飲みごたえのあるお味です。
お好みでどうぞ。


※「ハラール」も「シダモ」も地方・地区名です








初めて「六月の鹿」さんを訪ねたのは、まだギャラリーを営む前、
盛岡を旅した時のことでした。


以来、時折飲みたくなる鹿さんのコーヒー。

これまでも猪爪彦一さんの個展の際に「旅コーヒー」としてご紹介してきました。


落ち着いたこころもちになりたいときに鹿さんのコーヒーを思い出すのは、
お店の佇まいと、店内の空気感の記憶がセットになっているからだと思います。


今やお取り寄せもできるありがたい時代ですが、
また訪ねたい、いつか訪ねたいお店があるというのは、いいものですね。


いつかの旅の手がかりになればと、
取り寄せの際には、ショップカードも少し同梱していただきます。


ギャラリー入口にはこれまでの「旅コーヒー」のお店さんのカードも置いてあります。
気になるもの、お持ちください。


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第9回 Pegasusの会展

2024.6.18(火)~30(日)
OPEN    11:00~17:00 ※最終日は16:00まで
CLOSED  21(金)・26(水

◆猪爪彦一/油彩・キャンバス(6/18・30  在廊)
◆金内沙樹/油彩  (6/29・30  両日午後から在廊)
◆近藤充/アクリル・テンペラ・岩絵具(6/29・30  両日13時頃から在廊)