2024年5月29日水曜日

6/2「桂子の部屋」

外部イベントのお知らせです。

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2024.6.2(日)
Special Oneday Cafe  桂子の部屋
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▶会場 新潟市北区木崎2番地(駐車場あり)
①木崎公民館(メインの展示会場)
②ギャラリー&集いのスペース「てんゆう花」(交流のカフェ) 

▶10:00~15:00

▶発起人 近美千代さん、田中しのぶさん、大橋保隆さん、里村洋子さん






2020年2月26日に闘病の末、旅立たれた橋本桂子さん(上越市)をしのぶ会です。


当時、彼女を知る多くの方が、その訃報に呆然とし、
信じがたさたとともに、取り残されたような気持ちを抱いたと思います。


コロナ禍であったことから、ゆかりの方々が集う機会が設けられず、
気持ちのやり場がみつからなかった方が、ほとんどだったのではないでしょうか。


リーフレットにしたためられた発起人の方々のメッセージに↓
多くの方が思いを重ねることと思います。








私はかつて上越高田で営んでいた「caféたびのそら屋」(2005~2012)で桂子さんと出会い、
上越に暮らした期間のみならず、長岡で「maison de たびのそら屋」(2018~)を開くまでの間にも、
折々に様々な語らいと、たのしい時間をいただきました。


その間、総じて、彼女からはあたたかく励まされ続けてきました  (泣)


そういう方なのです。。。


渡邊洋治設計の「斜めの家」再生プロジェクトや、映画の自主上映会など、様々な市民活動を通して自らたくさんの関わりを築いただけでなく、ひとの生業を見つめ、新たに愉しいことが生まれるように、出会いをつなげることに尽力してきた方。


柏崎刈羽原発の再稼働についての県民投票を求める市民団体「みんなで決める会」の共同代表として出会われた方も多いかと思います。


彼女の姿勢の根底にあるのは、一生活者としての素朴な疑問と、問題解決に向けての対話。


価値観の異なるひとと対立するのでなく、相手を理解し、情報を交流し、意思を疎通させるべく根気よく語らうことを惜しまない。

東電や与党県議、どの立場のひとに対しても、
考えは違えど、敬愛のまなざしを向けていたと思います。


全県にわたる団体(みんなで決める会)の共同代表として表舞台に出るようになるにつれ、
出会った当初の印象から目覚ましく変化していかれる様子で、
私の中では、彼女の本質的な部分への敬意が増していきました。


でも、そんなふうに志はどっしりと確かな根を張っていながら、
かわいらしくて、ユーモアや、小さいものを慈しむ気持ちに満ちていて、

ふわふわとした、いたずらっこの天使のような人柄が
みんな、大好きで、、、


そんな彼女と再会できる「桂子の部屋」だと思います。


桂子さんと親しかった方々には、切なくも待望の機会だと思いますが、
名前を知っていただけという方にも、全くご存じない方にも、

ぜひ、ひとりの女性が生きたゆたかな世界や、大切にしてきたものに、
出会っていただけたらと思います。


私が出会わせていただいた「桂子さん」も、
彼女の広く深い世界の、ほんの一時期の、一部分だと思っています。

私も、初めて出会わせていただくような気持ちで伺いたいと思います。






2017.11.19

桂子さんが関川村に連れて行ってくれた日

雪の中、たわわに実りをつけた立派な柿の木

その下に置かれた椅子も 印象的でした


彼女を映した写真はないけれど

一緒に見た景色 語らった時間があります





2024年5月28日火曜日

【御礼】柏田良彰展

2024.5.14~26に開催いたしました《柏田良彰展》は、無事に閉幕いたしました。




窓の外は、色濃さを増しながら茂りゆく新緑の生命力。
館内には、静かなれど熱き作家のエネルギーが満ちていました。


一人の作家の世界を、存分に堪能させていただく「個展」。

なかなかの広さのあるこのギャラリーで、「個展」を開催することの凄さと魅力を
改めて感じた会期でもありました。






作品の多様さに、お客様も驚かれたことと思います。
シリアスなドラマを感じるものもあれば、ユーモアや遊戯を感じる作品もありました。

柏田さん曰く、
「スタイルが分散するのは、自分を分かったつもりにならないための予防線」であるとのこと。

「理解の出来ない事柄で心が耕され」てきたという感覚のもと、
「理解の範疇で制作するのが、一番無難なアプローチとは知りつつも」そこに ”謎” は介在しないとして、

”謎” の存在とともに、それをもたらす”遊び”を重視しておられます。




「遊びは、それを感じた人の中にも遊びがある事を自覚させます」とおっしゃる柏田さん。

遊びの力とは可能性を育てる力」であり、
それこそ柏田さんが考える「展示会の場のコミュニケーション」であるとのこと。


そして、

「遊びには破壊の力も含む事も忘れてはなりません。
全てを滅して無にする破滅ではなく、新たなビルドアップのための地ならしが破壊です。
破壊は固定概念を打ち砕くエネルギーです」

という言葉に、視野が広がる思いです。


そうしたスタンスから生まれた作品と、お客様の世界との豊かなる交流については計り知れませんが、
じっくりとご覧くださるお客様の多かったことが印象的でした。







県外からも、柏田さんの旧知の方々が駆けつけてくださいました。

非常勤講師を務める長岡造形大学からは、先生方や関係者の方々がご多忙の中お越しくださり、
柏田さんが長年の勤務の中で築いてこられた交流を垣間見せていただいたり、

なにより、授業を受けたての新入学の1年生が、信濃川を越えて(!)
幾人もお越しくださったのがうれしいことでした。


ご来訪くださいました皆様、SNS等で発信してくださいました皆様に、
心より感謝申し上げます。


DMを設置してくださいました事業所、ならびに会期情報をご掲載くださいました
「まるごと生活情報」様、新潟日報様にも心より御礼申し上げます。


どうもありがとうございました。






柏田良彰さんには、作家としての独自の探求の姿だけでなく、後進を育むお立場からも、
多くの示唆を含むお話を聞かせていただきました。

展覧会を通して生まれるものがある、ということを、会場としても感じさせていただいた会期です。


予定調和のない作品世界を旅しながら、新たな価値との遭遇と、答えにたどり着かない心地よさの余韻を味わっています。


遠方より、素晴らしき展覧会を、どうもありがとうございました。






お客様からいただいた芍薬は次々と見事な花を咲かせ、
最終日まで華やぎを添えてくれました。

閉幕後も、余韻に寄り添うように咲いてくれています。




次回展覧会は、6/18より開催です。







《第9回 Pegasusの会展》

会期  2024.6.18(火)~30(日)
OPEN    11:00~17:00 ※最終日は16時まで
休廊日   6/21(金)、26(水)


◆猪爪彦一(油彩・キャンバス)
◆金内沙樹(油彩)
◆近藤充(アクリル・テンペラ・岩絵具混合技法)


たびのそら屋では4回目、会としては第9回を迎える「Pegasusの会」の三人展。
会期が近づきましたら作家紹介と在廊予定をご案内いたします。





2024年5月25日土曜日

スピンオフ/宮埼眞『一期一絵』

ひとつ前のトピックスでは、柏田良彰さんの作品から
彼方(あちら)と此方(こちら)を感じたというお客様が話してくださった
「死者との対話」というフレーズに触れました。


この会期では、私もそんなことを思いながら過ごしています。





柏田さんからは全29点というたくさんの作品をご出展いただきましたが、
その大半がギャラリー側に展示されたため、喫茶室壁面の余ったところには、
久しぶりに故・宮埼眞さんの「鋳物ART」を展示しました。





宮埼眞《火焔》


流れ落ちた鋳物の破片を見立てて設えた作品のシリーズ






奥のガラス棚に置いている発表当時の作品集には、
このように書かれています。

(画像をクリックすると拡大表示されます)






それ以上にお伝えしたいのは、
「一期一絵」(いちごいちえ)という言葉にも現れる生き様。







人生の辛酸甘苦を味わいながら、
「たまたま許されて与えられた今日一日」をどう生きるか、ということを、
言葉だけでなく、日々の新たな出会いや関わりのなかで、
ユーモアと行動をもって示してくださった方。








宮崎さんのことを語ろうとすると、今も尚、胸が詰まります。


2019年の逝去の折にプライベートブログに綴った追悼を再掲します。






《GIFT》

タイトル不明だったため、あとから命名させていただきました





《WIND WAY》



喫茶室のガラス棚の真ん中に展示している《風の通り道》と名付けられたオブジェは、
上越高田で営んでいた「caféたびのそら屋」でも飾らせていただいていた作品です。

2012年のクローズの折に一旦、お返ししたのを、
2018年に新たな場所を開くにあたり、再びお借りしてきた折、

飾り棚の寸法も測らずに行き、持ち帰る時になってハタと不安になったものの、
置いてみたらワイドも高さもピッタリだったのは感動でした。







飾り棚に置く物は時々変わりますが、《WIND WAY》だけは開廊当初より、
この地に友人のひとりもなき頃からずっと、長岡での日々を見守ってくれています。







《火焔》は、日ごろはプライベートゾーンに飾られ、
こちらも maison の御守りのような存在になっていますが、

このたび久しぶりにお客様にお披露目できたこと、
宮崎さんをご存じない方々とも話題にできたことは、

私が宮崎さんの作品を持って営んでいることの、ひとつの意味であると思っています。


いつも出展作家の皆様には、喫茶室壁面や奥の棚も存分に使っていただいていますが、
今回、柏田さんが余地を残してくださったことで、共に飾ることができ、

柏田さんの作品世界がもたらす、彼方と此方の境界が溶け合うような空気の中で
特別な思いで、慈しむことができていると感じます。







宮崎さんは経営者として稼業を革新的に営みつつ、
ギターを爪弾き、唄を歌い、写真を撮り、言葉も綴る方でした。

事務所に飾っている「旅たち」と題された詩は、たくさん遺された作品の中のひとつで、
長女のらんちゃんが、私のもとに置いてほしいと託してくださったもの。


ご家族の元にあった方がよいのではないかとも思いながら、


いつでも、ここに在りますよ、、、


という気持ちでお預かりした、おそらくは彼女に向けて綴られたであろう言の葉は、
生前、宮崎さんとも意気投合していた父の言葉のように感じる部分もありました。


記された日付は「20050319(2005年3月19日)」とあり、
そのとき私はまだ宮崎さんとは出会っていませんが、
奇しくも、高田でのcaféの開業(つまりは新たな門出の)準備真っ只中だった頃合いです。


当時、父はどんな気持ちで、娘の何度目かの冒険を
(まだ冒険し足りないのかとハラハラしながら)見ていただろうかと、、、


想像するしかない親心の計り知れなさに
鼻の奥がツンとなります。






《 旅たち 》



私の理解できる世界から
私の理解できない世界に
飛び立とうとしている人がいる

私には理解できないが
彼女の魂に正直な選択なのだろう

はばむのではなく
エールを送ろう

周囲の無理解と孤独を代償に

言葉では表すことのできない
パッションに突き動かされて

自分の魂の声に従おうと
決めたものにしかわからない
心の静けさと

古い世界からの離脱という惜別を
抱いて

彼女が見つめるその向こうには
彼女だけのために輝く
彼女だけにしか見えない
彼女の星が輝いているのだろう


20050319
宮埼 眞








《柏田良彰展》は5/26まで。
最終日は柏田さん在廊で、16時にて閉幕です。




2024年5月24日金曜日

柏田良彰展⑧使者、あるいは死者との語らい

ご紹介が最後になりました。
出展作の中で一番大きい、洞窟の壁画をイメージして描かれた作品。

❖色彩は再現できていません。画面の質感と併せて、ぜひ実作品をご覧ください。





《 三人の使者 》

油彩、キャンバス






描かれたるは使者か、あるいは死者か


何をか伝えん





ちょっとかわいらしく、愛しげになるのが柏田さん流


彼方と此方の交わる世界







この大作に限らず、柏田さんの作品には、
生と死、昼と夜、光と闇、、、分かちがたきそれらが端々に描かれていることは、
初めてご覧くださるお客さま方にも届いており、


「このところ ”死者との対話”というテーマが気になっていて、作品から感ずるものがあります…」
と話してくださった方がおられたのも印象的なことでした。


まさに、まさに、
私もそんな思いを抱きながら過ごしている会期です。




《風穴のたて笛》

油彩、キャンバス / F6 



昨年亡くなった音楽家のイメージが投影されているというこちらの作品には、
彼岸に旅立ちしひととの語らいが含まれているでしょうか。。。







いつしかその名、知る人ぞ無きあとも

語りたる使者のある


安寧








《 柏田良彰 展 》

▶会期 2024年5月14日(火)~26日(日)
▶OPEN 11~17時

▶最終日は柏田さん在廊で16時にて閉幕です


柏田良彰展⑦謎

《 柏田良彰 展 》

▶会期 2024年5月14日(火)~26日(日)
▶OPEN 11~17時

▶最終日は柏田さん在廊で16時にて閉幕です






《 まほろ川 》

油彩・紙


ずっと揺らめいて、泳いでいたい まほろ川


…て、何かしら?と、ずっと思いながら
尋ねないでいる











《夜のけものたち》

油彩、紙






護っていてくれるならいいかもしれない







包まれたい夜もあれば

早く明けてほしい夜も  あるかもしれない





《悲しい夜》

油彩、板











《封印された夜》

ミクストメディア、紙


解き放つ呪文はいずこ










《薄暮の集い》

油彩、カードボード







「謎」を残した絵が”いい絵”だと思う、と話してくださったことが印象的でした。


観るひとにとっての謎、ではなく、
描くひとにとっての謎、が残る絵。


どうしたいのか、何が描きたいのか、
わかりきらない方がよい、と柏田さんはおっしゃいます。






《夜の相貌》

油彩、紙






こちらは、まさにそんな作品とのこと。

何をどう描きたいのか、自分でもわからないのだけれど、
わからない「謎」のままに作品として残しておくことが、次の制作のために必要なことであると、、、

幾人かの若いお客様にお伝えしたところ、

「(謎を残しておくことなど)考えたこともなかった…」と呟いた方もおられました。

完成を焦って、終わらせることを考えてしまう、と。






柏田さんの作品との出会いの中で、とりわけ若者たちに、
何かが拓けるような、新たな ”謎” の種が蒔かれているような。。。









2024年5月23日木曜日

柏田良彰展⑤ブリコラージュ

喫茶室には立体的な作品が4点、展示されています。
ずっと平面作品を描いていると、たまに立体的なものがつくりたくなるのだとか。

【ブリコラージュ】の語源は、ありあわせのものを用いて「器用仕事をする」ということのようですが、柏田さんは紙や布を貼り付けたコラージュよりさらに立体的なものをブリコラージュと称しておられます。

【ミクストメディア】は性質や種類の異なる複数の媒体または素材を用いる技法。
またそれによりつくられた作品です




《 RAINBOW WALL 》

ブリコラージュ





所有したひとだけが愉しめる面白い仕掛けが隠されている作品です

気になりました方、お声がけください🌈✨🐱














《 Fossa Magna 》

ミクストメディア、厚紙










《 burning and building 》

ブリコラージュ











《 crucifixion on a pallet 》

ブリコラージュ







【crucifixion on a pallet /パレットに磔(はりつけ)】と題された作品は、
何事があったのかと気になる様相です。


柏田さんは、作品はどれも愛憎半ばで生まれてくるのだとおっしゃいます。

この作品は、ある時は燃やされ、ある時は土に埋められたりもしたそうですが、、、

腹を割かれ、絵具で混濁したパレットにはりつけられたのは、
憎むべき誰か、他者などではなく、作家自身なのだと思われます。。。


今は穏やかに、うつくしく、
過ぎ去りし日のような佇まいをしています。






今回の喫茶室は、いつになく愛おしいケハイが満載です。

いつもならスピンオフとして会期後に綴るようなことですが、
今回は、なんとか会期中にご紹介できたらと、、、






宮埼眞《火焔》






まずは引き続き、柏田さん作品のご紹介を。
随分、堪能してきましたが、ブログに掲載できたのはようやく全体の2/3 でしょうか。。。

全29作品、大変、見ごたえのある展覧会です。
どうぞ会場でおたのしみください。




《 柏田良彰 展 》

▶会期 2024年5月14日(火)~26日(日)
▶OPEN 11~17時

▶最終日は柏田さん在廊で、16時にて閉幕いたします。