2023年9月27日水曜日

COREs/SOUKA

9月の展覧会《COREs》dpisode 1 
ご紹介しきれなかったいろいろを綴っています。


SOUKAのおふたりと野本昌宏さんは、「デザイン」を商品として「カタチ」にする仕事に携わっていることから、共通する苦心や、学びや、達成感への共感がおありのようでした。


野本さんは紹介文(下記掲載)の中で、彼らを「同志」だと思っていると書いておられます。


若者たちにとって、それはどんなにうれしい励ましであるかと思うと同時に、
野本さんの気持ちに応えるべく、今回の展示に臨んでくださったことを感じます。







~会場に掲示されていた野本さんからのご紹介文より~

SOUKA (松永さん、宮田さん)
ブランド立ち上げの際に、バックアップをしてもらったセレクトショップid の酒井君を通じて知り合う。
卒業に向けた展示・販売のために、商品を入れるショッパー(紙袋)の相談を受けて、二人のデザイン案を実際に商品化させてもらう素晴らしい体験をさせてもらって以来、年齢を超えた
同志だと勝手に思わせてもらっています。







2022年春に長岡造形大学を卒業した二人が在学中に立ち上げたアパレルブランド「SOUKA」。
(就職に伴い現在は活動休止中)

当時、
ふたりで綿密に打ち合わせて共同制作したアイテムと、ものつくりの会社に就職して1年半を経た「今」を込めた、単独制作のアイテムをご出展くださいました。







初めて拝見し、ふたりは、実は随分異なる志向を持っていること、
在学中は別々の先生の研究室に所属していたことなども知るにつけ、

そういう二人が、どこか通ずる(気の合う?)ところがあって、
ひとつのブランドを立ち上げていたということに、驚くとともに感動しました。


それぞれの違いと、共通して大切にしていること、卒業時の進路の選択、現場で得た経験… 
作品から様々なことを感じ、これからのこともたのしみになるような、とても印象的な展示でした。






◆松永晋弥さんのプリントTシャツ


プリントとしてデザインされた(sm)は、無形商材に使われる商標の一種「サービスマーク」を表しています。

ライダースジャケットとハートのモチーフに重ね、男性らしさや女性らしさといった目に見えない既成概念を無形商材として表現し、形のない物を商品にしようと試みた作品です。

Tシャツ本体は、プロダクトとして量産されているボディの中から、シルクスクリーンとの相性や着用時の透け感の有無などにこだわってセレクトし、自らデザインした版を、シルクスクリーンで手刷りしています。

プロダクト品の揃ったうつくしさと、ひとの手による細やかな差異のある表現、
両方を大切にしたいという、松永さんの意匠が現れた作品でした。






傍らには松永さんのシルクスクリーンTシャツの「版」も展示されていました。

同じ版を用いて、どのように異なるカスレや滲み具合に仕上げるかなど、
影響を受けたアーティストへのオマージュも込められていました。












crack hat
clown smock



◆宮田能吾さんは、本当は生地からつくりたい、とおっしゃるくらい、極力手仕事にこだわり、染めや縫製を手掛けた帽子と、道化師(clown) のスモックをイメージしたシャツコートをご出展。


このスモックは、最初のハリのある状態は、着ていくとやわらかくなる素材とのこと。
何人もの方が気に入ってくださいましたが、なにしろ身長180㎝くらい(?)の宮田さん自身の体格に合わせた上にオーバーサイズのデザインということで、なかなか体形に合う方がおらず、、、

シンデレラガール&ボーイがいらっしゃるのを待ちましたが、、、残念でした。



 


比翼仕様の前立て部分やボタンホールに施された、蛍光ピンクが混ざったような赤い糸のハンドステッチがとても素敵でした。
アンティークスモックにみられるイニシャルネームの赤糸刺繍のイメージを重ねているとのこと。






帆布に特殊な顔料をプリントし、更に塗り重ねた帽子は、漆喰が剥がれた壁をイメージしたもの。
使っていくうちに顔料が剥がれていくという、その名も「crack(亀裂・ひび) hat」。

こちらもかなり衝撃的な作品でした。


ブリム(ツバの部分)の湾曲のラインがとても素敵だったのですが、それは
「顔料をランダムにぬることで、不規則に記事へ浸透し湾曲」していき、
なんと「芯地を使わず、立体にしてからプリントすることで、意図せず変形する」とのことでした。
(掲示された解説文より)


意図しないことが起こることを、意図して行う、、、

宮田さんの志向の一端に出会えた作品でした。





壁面にさりげなく貼られていたのは、宮田さんの世界観を伝える写真をプリントしたもの。

洗いを経る毎に、馴染み、ほぐれ、色褪せたり、剥離したり、、、(crack hatは洗濯は不可)
愛用するひとの過ごし方(扱い方)によって、しずかに変容していくアイテムの息遣いと、
その壁の景色は、確かに重なって感じられました。







fold collar shirts 

ふたりそれぞれの体格に合わせたパターンで作られた
サイズ違いの同じシャツは、テーラーへの敬意が込められた意匠
安藤光晴さんの真鍮の釦とバックルが用いられています



長くなりましたが、最後にふたりの現在について少し。
(コレが書きたかったのです! 今のこと、これからのこと!


◆学生時代にファッションデザインを学んだ松永晋弥さんは、現在は多くの方がご存知のブランドで(社名は非公表)、この春から企画部門に配属されたとのこと。

松永さんの企画が商品化された暁には、そっと教えてほしい!と願っています。


◆テキスタイルを学んだ宮田能吾さんは、「綿の栽培から染め、織り、編み、縫製、販売まで、自分たちの手で取り組み、ほぼすべてがイッテンモノ」というこだわりのあるものつくりの会社(こちらは公表可とのこと)「tamaki niime」さん (兵庫県)に勤務しておられます。


暮らしや生き方、いのちのトータルに目を向け実践している、こちらもただならぬ会社である様子。
ぜひHPをご覧ください⇒ 





それぞれの環境の中で、どんなことに出会い、どんなふうに変容していくのか、
これからのご活躍と、再会の日を、心からたのしみにしています。