2023年1月9日月曜日

On Your Mark/ルーカス・レドンド・ボネット

2023 NEW YEAR EXHIBITION 《 On Your Mark 》

1.16(mon)~29(sun)
open 11:00~17:00(last day 16:00)
closed 1/20、25

 

作家紹介お二人目は、一人目の櫻井あすみさんと同じく、「工房このすく」で昨年8月に滞在制作をされた、韓国在住、日本語の話せるスペイン人の、ルーカス・レドンドさん。






《 GRAVID 》

油彩/17×25㎝/2022



◆Lucas Redondo Bonet / ルーカス・レドンド・ボネット

https://www.lucasredondobonet.com/
Instagram @ lucasredondobonet


出展作:油画
在廊日:ありません


《On your Mark》展の為に、画用紙を用いて十点の油画を制作しました。 

人間と異なる物質が融合したモチーフを中心に描かれています。

今回の作品は、人物画を得意とする自分が、制作過程において内的外的に体感するカオス的な感情を物質と融合させることによって表現することを試みた結果です。


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 作品制作のコンセプトは、pentimenti : ペンティメンティ(捨てられたストーリーとアイデア-直訳すると「後悔」)がテーマとなっている。

また、自身の作品制作そのものが研究題材となって、創作における過程すべてが、アート ・ベースド・リサーチ(ABR)研究に結びついている。

これらは、最終的な作品の完成形に焦点を置くのではなく、人が芸術、創造に携わるにあたり、作品の完成に向けての創意工夫の中で起こり得る、自身の失敗や停滞によって学ぶ事柄を背景として「後悔」をも、重要な可能性を見出す基点となりうることを明らか にする研究テーマである。

それらの作品は、過去、現在において自らの経験、夢、妄想、空想、想像等を基に 「記憶」を重ね合わせる。

また、制作過程において、観賞者に不思議なストーリー性を感じさせる手法として、平面制作の為に一旦、三次元を用いて自らの重ね合わせた記憶を具現化し、あえてそれを モチーフとする。

そのモチーフ制作の中で記憶のカケラをひとつひとつ組み立てることが、自身の表現活動 の起源となっている。



略歴

1979年 スペイン・バレンシア生まれ / 韓国在住
2011年 東京藝術
 大学美術教育科博士号 取得

同年より現在に至るまで韓国の大学において油画科教員として勤務
産業デザイン、アニメーション科の大学教育に携わっている


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2008-2011 東京藝術大学、東京、日本。美術教育の博士号。

2005-2008 東京藝術大学、東京、日本。美術教育のマスター

2004-2005 東京藝術大学、東京、日本。デザイン学科の研究生。

2001-2002 早稲田大学、東京、日本。国際部プログラム(交換プログラム)。

1997-2001 バレンシア大学、バレンシア、スペイン。歴史学科、美術史の学士号


主な展示会(個展)※その他の出展歴は作家HPをご参照ください

2022 REGRETS、ギャラリージン、横浜

2017 Unreal Landscapes、Fondas de Irrealidad。Galerie Jin and Chiyo's、横浜、日本

2016 アンリアル ランドスケープ。ギャラリー千代ズ、横浜、日本

2015 Crossroads(展示とパフォーマンス)。大邱アートファクトリー

2015 クロスロード。ギャラリージン、横浜、日本

2014 300の10.ギャラリージン、横浜、日本

2014 ADAAC Galerie Chiyo's、横浜

2013 分離。Heesu Gallery、ソウル、韓国

2012 インテリア。インターバーゴ ホテル (大邱)   


《 SPLIT 》

油彩/17×25㎝/2022




上記、制作コンセプトに書かれている「アートベース・リサーチ/ Arts-Based Research(ABR)」については別のトピックスで改めてご紹介します。

その研究の一環として2022年8月、韓国から来日されての「このすくレジデンス」の折、ルーカスさんの絵画制作は、実際の出来事からはじまる、ということを垣間見させていただきました。


直接的な、具体的な体験・・・ 例えば、


長岡に到着して早速の散策時、自転車をこいでいたら蝉が顔に激突!!
人がほとんど歩いていない町で、最初に出会ったのがセミ!

そのことで、長岡の街から welcome!と言ってもらえたと思ったという、、、


それがひとつのはじまり。


その後、紙に向かうかと思いきや、しばしのスケッチを経て”模型作り”が始まった滞在制作の様子と作品になるまでの展開は、ルーカスさんのYouTubeでご覧いただけます。

⇒【The digisketch】  https://www.youtube.com/@thedigisketch

「NAGAOKA PHOTOGRAPHIC」 のシリーズがPART10までアップされています。

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ルーカスさんは、2017年までは主にパネルに油絵を描いておられたとのことですが、
現在は韓国の大学のアニメーション科で教えていることもあり、
学生たちとの共有の都合からもデジタルアートを中心に制作しておられます。

長岡での蝉との遭遇に始まった作品も、デジタルで作成し、最終的には映像と併せたインスタレーションとして発表したいとのこと。

今回は韓国からお送りいただく状況を考慮して、パネルではなく画用紙に油彩の作品に取り組んでくださいました。

久しぶりに油彩で描いた気持ちは、ルーカスさんにとってうれしいものだったとお聞きして、
私もとてもうれしいです。


将来的にはパネルと油絵具で描き続けたいとのこと。


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今回の4名の出展者は、多様な技法を用いて表現される点も、共通するところです。

基礎として学ばれたことを元に、異なる画材や技法を試み、取り入れ、
平面作品だけでなく、時に立体、あるいは「絵本」として、
その世界の物語を様々なかたちで届ける、、、



そう、きっと、 

「届ける」=  観るひと(のこころ)と「関わる」、ということも

彼らに共通する「大切なこと」なのではないかと、

それぞれ遠方から送ってくださった作品を受け取りながら、感じています。