2024年7月21日日曜日

手塚千晴/素材の声を聴く

《 三人展 中庭 》

2024.7.9 tue ~21 sun
Open   11:00~17:00 ※最終日は16:00まで

🌻加納いずみ(インスタレーション) 
🌻高畑杏子(写真) 

🌻手塚千晴(木彫) 

🌿「中庭」のInstagram@ nakaniwa.awa



《薫風》

桐・岩絵具




木の節(フシ)や割れがそのままに生かされた作品が印象的な、手塚千晴さんの作品。

先の作家紹介で記載したコメントには


~年輪を持つ、木という生きた素材との対話を軸に
自分なりのアプローチで新潟を彫り出しました。 


と書かれています⇒






このたび初めて手掛けたという岩絵具を用いた板絵は、
桐と欅の古材が用いられています。





作品部分/欅




桐の木の節が鳥みたいな作品




先日お知らせしたNSTの「ユースタッチ」内の特集、「にいがた夢つうしん」はご覧いただけたでしょうか。

手塚千晴さんへの取材に絡めて、搬入時の三人と、営業中にご来訪のお客様へのインタビューが紹介され、5~6分のコーナーですが、作家たちの思いを伝える素晴らしい内容でした。


その中で、千晴さんがインタビューに答えていました。
木も、子どもと同じで思うようにならない、と。


木の種類による特徴だけでなく、製材して立ち現れてきたその木の個体としての特性を、
なるべくそのままに生かすことを心がけたことが感じられる作品たち。






《灯台のある山》

杉 sold out



今回は大作のマケット(縮尺模型)として制作された小さい山たちも展示販売されているのですが、

その中のひとつ《灯台のある山》は、なめらかな面ではなく、
えぐれたような節のある側をオモテ面としていることに作家性を感じます。


角田山の真横を通るシーサイドラインを走ればわかるように、
山とはまさにこうした表情を見せるもの。


この杉の木の、この部分と出会ったからこそ生まれた再現性のない姿に
心底、惚れ惚れ。

(開幕初日に来られた山男さんのもとに旅立ちます🤣 内心、くーーー








《早苗月》




奥に見える《波紋》と共にウッドデッキに展示しているのは、
以前、アルミの円盤の上に設置した状態で発表されたという《早苗月》。


役割を果たし終えたということで、今回は連山単位で手放すとのこと。

どのように置いてもらってもよいですと、おおらかに箱に入れて持ってきてくださった作品です。


晴れた日には毎日、落ち葉を掃いて、《波紋》の傍らに連山を円形に集合させるのは、
加納いずみさんの《人生カレンダー》に〇をつけ、《盤石却》のスイッチを入れるのと同じく、開幕前の特別なひと時。






この作品も、節づかいが絶妙です。

えぐれた部分のある山塊を選んでくれたのは、やはり山登りをする方々でした。






sold out

こちらも山な方のもとへ





《波紋》



これまでは大作をつくることが多かったため、作品を販売するのは初めてという千晴さん。

自分の彫刻は自己満足なのではないか、あとは薪になるだけではないか、と
冗談のように笑うその奥に、様々な思いのあることを感じます。


大丈夫。


大切にしているものは、観る人に、ちゃんと届いておりますよ。






《小さい木の家》






晴れた日の夕方は、クローズしてからがマジックアワー。

遠き 山に 日は落ちて...

と心の中で口ずさみながら、山影に見惚れて過ごしました。






名残惜しき会期末を過ごし
ご紹介を書ききれぬまま迎える最終日。







会場の作品と、作家との語らいをどうぞおたのしみください。

午後には作家揃って在廊で、16時にて閉幕です。





《曇天》


雲の下に山 雲の上は晴れ




2024年7月20日土曜日

加納いずみ/行為の蓄積

《 三人展 中庭 》

2024.7.9 tue ~21 sun
Open   11:00~17:00 ※最終日は16:00まで

🌻加納いずみ(インスタレーション) 
🌻高畑杏子(写真) 

🌻手塚千晴(木彫) 

🌿「中庭」のInstagram@ nakaniwa.awa







《人生カレンダー》

紙、ほか







作者の誕生日から平均寿命までが綴られたカレンダーは、
人生の残り、に意識を向けて時間を可視化した作品です。















平均寿命を表わす年月の帯の、どのあたりに今、居るのかと、
鑑賞者も自身の人生を重ね、思いを巡らせるかもしれません。









私は、まずは色とりどりの丸が付けられた「今日」の蓄積に、
我にも彼にも、よく生きてきましたね、の労いを。






そして、平均寿命を迎える頃のいずみさんには、
どうやら間違いなく会えないのだろうな、、、と思いながら、
カレンダーの終わりの西暦を眺めます。


そこにあるのは寂しさではなく、

彼女たちは、それくらい未来を生きるひとたちなのだ、という
勢いのある芽吹きを見るような眩しさであるように思います。






ですがそれ以前に、私はこのカレンダーを作成すること自体に、感服するのです。


前のトピックスでご紹介した「却」(こう)を調べる中で「億劫」(おっくう・おっこう)という言葉も出てきました。

作家とは、「億劫」にひるまないタイプのひとのことだと思っています。


カレンダーのハンコがあって、それを押していくだけです、とおっしゃるいずみさんは、
制作過程を「作業」に落とし込んでいくのが好きとのこと。

喫茶室奥の棚に展示されたドローイングも、そうした行為の蓄積の作品のひとつ。





《無題》

額装ペン画





ペンで引いた線に定規を重ね、白地の側に新たな線を引く、というルールを決めたら、
あとは極力感情を加えず無作為に、機械的に動作を繰り返し、その結果を見る、という作品。


画面の下に行くにつれて線が傾斜していくのは、左側の方が筆圧が大きいのでしょうか、
インクの滲みが太くなり、その軌跡に忠実に定規を当てた結果の傾斜だと思われます。


機械的であることを志向しながら、どうしても再現不能な、自らの手跡を感じる
ランダムな結果が導き出されることを、彼女はどう眺めているのでしょう。


そうしたことこそが、彼女の作品の核心であるように思いますが、
裏腹に、無機質なものへの憧れは募るものなのでしょうか、、、







いずみさんのかわいらしいキャラクターと相まって、ジタジタしている様子をつい
微笑ましく感じてしまいますが、

喫茶室窓辺の机の上にあるこれまでの作品を紹介した資料の中には、
卒業制作の頃の切実な気持ちが綴られていました。






卒業と同時に、もう作品制作はしないと決めて、彫刻の道具などは全て後輩に譲ったとのこと。

2019年に同期の二人と再会したのを機に創作を再開したものの、様々な素材を用いるため
作品に統一感がないように感じられ、「木」や「石」といった自分の代名詞になるような特定の素材がほしいと、つい先日は話しておられましたが、、、


私は今回の作品を拝見し、
いずみさんはすでに持っている、と思いました。


それはもう、記されていたのではないかと。


















名残惜しき会期末。

最終日は、手塚千晴さんは昼前から、午後には《中庭》に3人揃って
16時にて閉幕いたします。







2024年7月19日金曜日

加納いずみ/時の可視化

三者三様の作品の魅力を、愉しんでいただいている《三人展 中庭》。

ギャラリーに入ってすぐに対面する加納いずみさんの作品は、

ほぉ、、、と立ち止まって眺めるやいなや、禅問答が始まるような作品です。




いずみさんの出展作品は、「インスタレーション」(ざっくりと空間展示)と表記されていますが、
コンセプチュアル・アート※(概念芸術)寄りの志向で制作しておられます。

素材を用いて芸術作品を作るという技術面より、作品製作の背景にある発想や思想に重きを置く芸術





右)《芥子却》(けしこう) 1/20000バージョン

 左)《盤石却》(ばんじゃくこう) 短縮バージョン







仏教用語で永い時を表わす「却」(コウ)という時間の単位についての二つのたとえ話を、
縮小・短縮して表わしたふたつの作品。


作品解説は語り過ぎないことに苦心するとのことですが、
その絶妙なボリュームと、わかりやすさに関心します。


難しい話になりがちなところも軽やかに縮尺して示し、
私たちはコンセプトについての共通認識の土台を得た上で、

それでも残る謎に思いを巡らせ、作品と、居合わせたひととの語らいに
向かうことができます。






《 芥子却 》 1/20000バージョン

芥子の実、木箱、ピンセット








《盤石却》 短縮バージョン

モーター、布、石  ほか




真面目さと、ユーモアと、シュールな可笑しさと、うつくしさ、

河原の石や芥子粒など、きわめて再現性の低い自然の素材をメインに用い、
そこここに作家の生の手仕事の痕跡が残されているにもかかわらず、

実は「もの派」が好きで、レディメイド(既製品を用いたアートの文脈)に憧れているという、

相反するようにも感じられる要素が、絶妙な配分で散りばめられた作品世界。





《観ることについて》

額縁写真、石 ほか






作家の自問につられて鑑賞者も自問する作品。


「作品を鑑賞するとき、私が見ているのは作品なのか、写真の表面なのか、キャプションから得る作品情報やコンセプトなのか、作品から早期される個人的な思い出との結びつきなのか、、、」


私は、作品になるまでの過程を見ようとして(知りたいと思って)いることが多いようで、

この作品でもっともハッとしたのは、作家が注いだ時間、を「見た」と感じた瞬間です。


額装された写真部分は、デジタルを扱う作家であれば居ながらにして、たちまちに作れると思われますが、本作は、

石を用いた過去の作品⇒を記録した写真⇒を額装して撮影⇒したのを現像に出して⇒
また額装して撮影⇒したのを現像に出して、、、と


「却」ほどの時間ではないにせよ、作家が実直に手を動かし、足を運び、
形にしていくために、注がれた時間のあることを、

作者以外の方々との語らいの中で(つまり作者が解説しないところで)
見えたように感じた瞬間に、ひとつの感慨がありました。


《芥子却》や《盤石却》、次でご紹介する《人生カレンダー》は
ストレートに時間を可視化することを目的とした作品であることに対し、
《観ることについて》は作家にとっては異なるスタンスの作品であるようなのですが、


図らずも、時間の経過、時の流れといった、目に見えないものをみせることが、
共通の伏線になっているのが、いずみさんの作品世界なのではないかと感じたり、、、


鑑賞者は往々にして、作者の意図せぬところをみているかもしれない、
という一例の報告のような所感になりました。





《人生カレンダー》

紙、ほか






《 三人展 中庭 》

2024.7.9 tue ~21 sun
Open   11:00~17:00 ※最終日は16:00まで
Closed 12 fri, 17 wed

🌻加納いずみ(インスタレーション) 在廊:7/13、18、21(各日午後)
🌻高畑杏子(写真) 
7/11、14(13:30~)20、21(13:00~)
🌻手塚千晴(木彫) 7/10(11:00~14:00)、14(13:00~)、21(11:00~)

🌿「中庭」のInstagram@ nakaniwa.awa




2024年7月18日木曜日

高畑杏子/ヤマヲ マトウ

《 三人展 中庭 》

2024.7.9 tue ~21 sun
Open   11:00~17:00 ※最終日は16:00まで
Closed 12 fri, 17 wed

色彩は再現されておりません。
実作品は高畑杏子さんのInstagramをご覧ください⇒ 
@_____k_y_t





《蝶ケ岳》 作品部分




sold out



作品についての解説は特に無く、
撮影場所を書いたキャプションのみが添えられた杏子さんの作品。

《ヤマノモヨウ》






《安達太良山》








《上高地》







《不動堂山》






喫茶室手前のコーナーにそっと置かれた2023年の作品集『ヤマノモヨウ』には


「撮りたいものに出会いました」


「それは山にありました」


と記されています。







初めての登山の感動、山行きを重ねる度に知る新たな光景、

山での出会い、仲間たちとのかけがえのない時間、、、


自身にとっての特別な瞬間を収めた写真が

観るひとの中にも、小さからぬ出会いをもたらすことを感じる展覧会。







《北横岳》







数ある瞬間の記録(記憶)の中で、どれを作品として額装するかを決めるのは、
とても悩ましいことなのではないかと想像します。


出展を重ねながら、なぜ撮るのか、残したいのか、そして伝えたいのかを自問し、
鑑賞者との語らいの中で気づかされながら、その指針は明確化されてきた様子。






《秋田駒ヶ岳》










《金峰山》







展覧会に際してのコメントには
 
~滑らかな輪郭、優しい色、強い光、初めて目にする現象、
それらを自分の中に取り込むことができたなら。
せめて身に纏う(まとう)ことができたなら~
      

と寄せられています。


コメントを記載した作家紹介のトピックス⇒ 文末では、
3月の個展《ヤマノモヨウ》のことに少し触れました。


その時の会場には作品集『ヤマノモヨウ』の表紙に用いられた写真がプリントされた布が、
天井から下げられ、やわらかに揺らいでいました。







《猿毛岳》





自然界が見せる模様に魅せられ、

こんな柄のスカートがあったら、こんな形の耳飾りがあったら、、、 と

そのうつくしさを身に纏うことを夢見るように、聴かせてくれた冬の終わりの頃でしたが、


本当の願いは、もっと本質的なところにあったと、

思い至っての、今回の作品セレクトである様子。






《美ヶ原高原》






3月の個展を経ての《三人展 中庭》。

傍らの展示台上のポートフォリオに、あらたな一行をしるした1ページが
追加されました。







いつもお天道様がみている

と感じながら生きることと、似ているように感じます。


表面的なことだけでなく、

自分だけがわかる、こころの奥に、山を纏えるひとになることを思いながら


憧れを、写真に、手元に。








🌻加納いずみ(インスタレーション) 在廊:7/13、18、21(各日午後)
🌻高畑杏子(写真) 
7/11、14(13:30~)20、21(13:00~)
🌻手塚千晴(木彫) 7/10(11:00~14:00)、14(13:00~)、21(11:00~)

🌿「中庭」のInstagram@ nakaniwa.awa