2022年6月24日金曜日

手掛かり

ここまでの展示風景は、竹本さんが美術家の飯塚純さんに依頼して撮っていただいたものを使用させていただきました。 
JUN IIZUKA オフィシャルサイト⇒ 

ここからは私の拙い画像で綴ります。(以下、竹本悠大郎 作品部分)





《 謳う 》

2022  乾漆・木



実はこれまで、こうした人物彫刻にはほとんど親しんできませんでした。
関係性が持ちにくかった、と言えばいいでしょうか。
この展覧会で自分自身が何を感じるか、ということがいつにも増して愉しみなことでした。


結果、毎日、何度もハッとさせられながら、
全身、全感覚で、この空間に満ちた作品のインパクトを味わって過ごしています。






《 遠くへ 》

2021 乾漆






同《 遠くへ 》



制作や研究に携わる方にも多くご来訪いただいており、作家在廊時には、批評的な視点で細部まで鑑賞していただいてのご講評が、大変ありがたい力づけとなっている様子を垣間見ながら、私自身は一鑑賞者として(すみません)、こころを空間に浸らせるようにして楽しませていただいています。


とても贅沢な展示です。


今展の空気、作品から漂う気配は、これまで味わったことのない新鮮なものに感じられ、

それは何に由来するのか、、、

彫刻についてのこういう経験がこれまであっただろうか、、、 


それは「この場」でできること、という私のテーマにつながる問いでもあって、
美術家の皆様の観点とは違うけれど、やはり一鑑賞者というのとも違う、

場の主宰者としての思いを巡らせています。







《 おもかげー碧の情景ー 》

2021 乾漆



7世紀に日本に伝わったという脱乾漆という造像技法や、
どこか古代彫刻、近代彫刻を思わせる竹本さんの人体モチーフの彫刻の受け止め方は様々です。

とある対話で出たように、
それを果たしていにしえの追随として語り終えていいのか、、、
(否、と思っています。)


竹本さんの論文(下記①)では「合理化が進められる現代において、脱乾漆技法による彫刻制作は時代にそぐわないものであろう。しかし…」と、この技法固有の「非合理的な工程」による試行錯誤がもたらすものについて述べるくだりがあります。

考察は「素材のリズム」に着目した次なる論文へと続き(下記②)、どちらも私にはいくつかの「手掛かり」を含む、興味深いものでした。






《 告ぐ 》

2022 乾漆




質感、フォルム、まなざし、影、漆の香り、作家との語らい、
展示された論文の断片にもハッとさせられながら、

日頃そこはかとなく感じていること(必ずしも作品鑑賞とは関係ない出来事も含む)を、
改めて引き寄せ紐解く手掛かりを見つけるうれしさ。


「感じる」と「考える」、「黙す」と「語る」、新たな出会いと温故知新、
光と影、静と動、、、 それらのバランスが最高に気持ちのいい会期を過ごしています。


皆様には、どんなひとときになるでしょうか。
その日、その時の光の中を、どうぞゆっくりとおたのしみください。





同《 告ぐ 》



ご紹介した論文。


① 『脱乾漆技法による彫刻制作における技法と表現の関係
―鑑真和上坐像の造像過程にみる技法の獲得に着目してー』

大学美術教育学会「美術教育学研究」第52号 (2020):233-240


② 『彫刻制作におけるモノの働きと制作者の思考
ー素材のリズムと制作行為の相補関係を手掛かりにー』

大学美術教育会「美術教育学研究」第53号(2021):145‐152


◆会場には5つの論文を展示しています。
ご希望の方には後日、お送りすることもできます。





《竹本悠大郎乾漆彫刻展》

2022/6/18(土)~28(火) ※6/22(水)休廊日
OPEN 11~17 ※最終日は16時半まで


【作家在廊予定】


・会期中の土日:終日
・会期中の平日:6/23以外、
13~17時頃



◆6/25(土)14~17時は、隣接する「工房このすく」にてワークショップ(WS)開催のため、その時間帯については竹本さんのギャラリーでの対応は限られます。ご了承ください。

WS詳細 ⇒  ほぼ定員に達しましたがご希望があれば僅かに調整可能です。

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昨日6/23は、いきなりの真夏日の到来でしたが、今朝は恵みの雨。
二日前からの迷い猫を無事に保護できたので、
カラスも騒がなかったし、雨音がしても安心して眠れました☺




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