このたび初お披露目となった川田淳さんの Cyanotype print の作品。
「サイアノタイプ/青焼」は、印刷業や設計関係でお仕事をしておられた方には懐かしいもののようですが、私含め、初めて出会うお客様も多いようです。
《けふはけふ》(今日は今日)シリーズ
川田さんの作品は、通常の「青焼」に媒染の工程を加え、黒に近い、深い色の仕上がりになっています。
青焼用のネガフィルムを作ることが最も苦心するところで、幾度もやり直しをしながら程よい濃淡の階調を模索してきたとのこと。
用紙への焼き付け工程もまた、水彩紙に感光液を塗ることに始まり、露光のタイミングを見計らうなど、技法としては世に確立されたものであるものの、作家独自の感覚による追求が尽きないものであることは、他の美術表現と同じであるように思われます。
「青焼」について調べてみると、本来的な意味から、アート作品としての写真にまつわることまで、初めて知ることがたくさんありました。気になった方はぜひ検索してみてください。
「青焼」の工程の中で生まれた作品がこちら↓
「写真と日本画の展示」と思っていらしたお客様は、
版画のようにも、絵のようにも見えるこの3枚に、まず考えさせられます。
黄緑色が印象的な淡いフォルムの画面は、
ネガフィルムが焼き付けられる途中をデジカメで写して、拡大して、プリントしたもの。
《between negative and positive #01》
↑ になる途中の瞬間が ↓
《between negative and positive #02》
↑ になる途中の瞬間が ↓
《between negative and positive #03》
↑ になる途中の瞬間が ↓
印象的な黄緑色は、用紙に手塗りされた感光液の色。
一見、版画のようにも見えるこの1枚は、
画面が刻々と感光して変化していく途中の光景をそのままに捉えた、
写真ならではの瞬間の記録なのでした。
紙の質感やインクの粒子、感光液の痕跡、、、
様々な物質感を感じる今回の作品は、川田さんいわく
「デジタルのアナログ的表現」
モノクロで、階調の幅にも制約があるという「 Cyanotype print / 青焼 」を通して、
何を、どう撮り、どう見せるかだけでなく、「写真」という表現の根源的なところにも、
新たに出会わせていただいたように思います。