2023.11.7~19に開催されました《有元利夫 オマージュ展》は、強風雨で荒れ模様の日もありましたが、賑わいをいただきながら閉幕いたしました。
ギャラリーから有元利夫へのオマージュを込めて、
僭越ながら、どこか有元の作品世界に通ずるように感じる4名の作家にご出展いただいた展覧会。
様々な出会い、再会、発見が繰り広がった会期でした。
有元利夫と同時代を生き、影響を受けたとおっしゃる猪爪彦一さんは、たびのそら屋で最も多くご出展いただいている作家であり、長年のファンのお客様も多数おられますが、今回、油絵と併せてご出展くださったオブジェに、また新たな世界の広がりを感じていただけたのではないかと思います。
大橋麻耶さんは、有元作品には出会う機会がなかったという若い世代ですが、私は彼女の世界にも独特な時間の流れ(あるいは静止)を感じ、有元と共通するここちよさがあることを改めて確かめることができました。
観るひとと共に、新たな物語を紡ぐことのできる作品世界。
それはお求めくださるお客様の心模様に如実にあらわれているように思われて、観るひとの人生の物語を引き出すちからを、秘めているように感じられます。
そして東京からご出展くださった広沢仁さん。
佛淵静子さん同様に、お会いしたことのない段階でのご依頼でしたが、快くお引き受けくださり、
遠路来越、搬入・展示してくださいました。
独特の気配をもつ木彫作品と展示の妙は、池田記念美術館の展示で魅了された世界そのもので、搬入当初には楠の香りと共に、ガラス越しでなく、間近で拝見させていただけたことの至福。
「油絵のような版画」を目指してきたという独自の技法について、お聞きできたのは閉幕後でしたが、油性インクを用いるがゆえの悩ましい点があるとのことで、今後は「いい香りしかしない」木彫に、シフトしていくことを視野に入れておられるご様子でした。。
最終日にハラハラしたことといえば、東京からこちらに向かっていた仁さんが、自家用車の故障に続いて、高速道路の一時通行止めに遭い、閉幕に間に合わなかったこと。
レンタカーに乗り換え、暗くなってから到着されて、翌日の搬出となりました。
最終日は全員在廊予定で、仁さんにも会いたい方が複数お越しくださったのですが、ご対面が叶わなかったのは残念なことでした。
仁さん本人も、新潟県内で寄りたいところが他にもあったかと思うのですが、作品を積み込んだのちには一路、ご自宅へ。
心配してくださった皆様には、無事にご帰宅されましたことをご報告いたします。
とりわけ作家の皆様からの関心が ”高い”を越えて”熱かった”仁さんの作品。
遠方での出展はご負担もあると思うのですが(車のトラブルさえなければ)「そんなに遠くないと思った」とおっしゃってくださいました。
出展者4名の皆様それぞれの次なる機会を、うきうきと思い描いてまいります🌈✨
そして、次回展覧会の主役・中村玄さんからは、有元利夫の銅版画コレクションの中から1点
《THE MOONMAN》(1983年制作)を喫茶室に展示していただきました。
有元作品の中では極めて稀な(ひとではないモチーフの)作品で、玄さんによれば稲垣足穂の短編小説『一千一秒物語』(1923年 金星堂)からインスピレーションを得た風貌であるとのこと。
様々なコラボを愉しませていただいた、しあわせな《有元利夫 オマージュ展》は、在りし日の画家(有元利夫/1946-1985)と作家(稲垣足穂/1900-1977)のコラボにも見守られての、贅沢な会期でした。
企画のきっかけをくださいました中村玄さんと、イメージを越えた展覧会を叶えてくださいました出展作家の皆様、新たな出会いをたのしんでくださいました皆様に、こころより感謝、御礼を申し上げます。
広報にご協力くださいました事業所ならびに、SNS等で発信してくださいました皆様にも、厚く御礼申し上げますと共に、引き続き、12月の展覧会にもお力添えをいただけますよう、よろしくお願いいたします。
中村玄さんがコレクションする有元利夫の版画と、喫茶室ではこの度、企画刊行された有元利夫オマージュ『記念版画集』の作品展、工房このすくでのトークイベントや、笠原恒則さんによる小型チェンバロ(スピネット)の演奏会など、盛りだくさんの展覧会です。
詳細は後日ご案内いたします。
1年の締めくくりの展覧会を、存分におたのしみいただけますように。