5名それぞれのパワフルさとユーモアと、創造力の「泉」なることを身近に感じながら過ごしてきた展覧会
大橋絵里奈さんの「底力」の在りようを感じさせていただけたこともまた、とても印象的なことでした
春待つ惑星
(木製パネル・アクリル絵の具・2020)
「夢と現実を彷徨する少女」をテーマとする、繊細でデリケートな世界を
表現し続ける大橋さん
2018年に当ギャラリーで開催された「エックス展Ⅸ」以来、気になる方だったこともあり、
手元に2019年8月の新潟日報紙の「にいがたの気鋭」で紹介された記事を残しているのですが、
読み返すにつけても彼女に一貫しているのは「テーマ」だけではなく、
「もっと描きたい」、(新たな試みに)「挑戦したい」という力強い創作意欲
出展をご依頼した折、試してみたい画材があるのです
と話しておられたのは右側2枚の
「昆虫詩想」シリーズ
羊皮紙に鉛筆描きした作品です
昔の技法で製造・販売している職人さんを見つけて購入したという、
厳密には山羊皮の「羊皮紙」
動物の皮なだけあって手触りはツルツル、プルプル、
「コラーゲン的なものを感じます」とのこと
「鉛筆との相性が思いのほか良かった」ことと、
市販の紙と違って「製造過程で色ムラができたり、厚さが違ったり、同じものがふたつとない点」が気に入ったとのこと
写真という瞬間性を追求する中村紗央里さんや、
版画でありながら「1枚だけ」を世に送る岩田圭音さん、
自然界が生み出した偶然のフォルムを活かすさいとうようこさん、
同じもののふたつとない素材を扱う不破妙子さん、
そして大橋絵里奈さんの手描きの絵画ももちろん、この世にふたつと存在しないものですが、
その画材にも、飽くなき追求は込められているのでした
ぷるぷるの羊皮紙と知って観ると、
彼女の作品世界の妖し感、増幅です
イノセント (2016)
実は今回、大橋さんは最後の1点の搬入を控えた開幕目前に「不慮」のトラブルに見舞われ、
シリーズで出展予定だった4枚のうち2枚を旧作に変更しての、渾身の展示でした
本人はもちろん、関係者一同が心臓バクバクになった事態を経て、
会期半ばの在廊時に見せてくださった復活の笑顔に、全員どれだけ安堵したことか
作品と同様に線の細い可憐さを感じる絵里奈さんの、気力と底力!
嗚呼、きっとこちらが本当の彼女
◆絵里奈さんは、最終日の午後も在廊してくださいます
オデット(2016)
とあるフライヤーに用いられたのを拝見したことがあり、
図らずも原画を観れてうれしかった1枚
この度、たくさんの白鳥が飛来する街に住むひとのもとへ
旅立つこととなりました
何がどう転ずるか、
わからないものです
困難の中にある不屈なる精神、
胸の内にある核心を、ほどけないようにきゅっと結ぶ気持ち、
伏せたまなざしの中に描く希望、、、
そんなことも感じながら
時世を忘れ、言葉無用に、その前で佇み続けたくなる
一枚の絵
いよいよ最終日
12日は16時にて閉幕です
昼頃より不破妙子さん、
午後から中村紗央里さん・大橋絵里奈さんが在廊されます
天気予報もまずまず
換気しつつ、マスク着用しつつ、名残りの桜と共に
お待ちしています