2020年4月12日日曜日

大橋絵里奈さん/イラストレーション

5名それぞれのパワフルさとユーモアと、創造力の「泉」なることを身近に感じながら過ごしてきた展覧会

大橋絵里奈さんの「底力」の在りようを感じさせていただけたこともまた、とても印象的なことでした



春待つ惑星

(木製パネル・アクリル絵の具・2020)



「夢と現実を彷徨する少女」をテーマとする、繊細でデリケートな世界を
表現し続ける大橋さん


2018年に当ギャラリーで開催された「エックス展Ⅸ」以来、気になる方だったこともあり、
手元に2019年8月の新潟日報紙の「にいがたの気鋭」で紹介された記事を残しているのですが、

読み返すにつけても彼女に一貫しているのは「テーマ」だけではなく、
「もっと描きたい」、(新たな試みに)「挑戦したい」という力強い創作意欲




出展をご依頼した折、試してみたい画材があるのです
と話しておられたのは右側2枚の

「昆虫詩想」シリーズ

羊皮紙に鉛筆描きした作品です




昔の技法で製造・販売している職人さんを見つけて購入したという、
厳密には山羊皮の「羊皮紙」

動物の皮なだけあって手触りはツルツル、プルプル、
「コラーゲン的なものを感じます」とのこと

「鉛筆との相性が思いのほか良かった」ことと、
市販の紙と違って「製造過程で色ムラができたり、厚さが違ったり、同じものがふたつとない点」が気に入ったとのこと


写真という瞬間性を追求する中村紗央里さんや、
版画でありながら「1枚だけ」を世に送る岩田圭音さん、
自然界が生み出した偶然のフォルムを活かすさいとうようこさん、
同じもののふたつとない素材を扱う不破妙子さん、

そして大橋絵里奈さんの手描きの絵画ももちろん、この世にふたつと存在しないものですが、
その画材にも、飽くなき追求は込められているのでした


ぷるぷるの羊皮紙と知って観ると、
彼女の作品世界の妖し感、増幅です




イノセント (2016)



実は今回、大橋さんは最後の1点の搬入を控えた開幕目前に「不慮」のトラブルに見舞われ、
シリーズで出展予定だった4枚のうち2枚を旧作に変更しての、渾身の展示でした

本人はもちろん、関係者一同が心臓バクバクになった事態を経て、
会期半ばの在廊時に見せてくださった復活の笑顔に、全員どれだけ安堵したことか

作品と同様に線の細い可憐さを感じる絵里奈さんの、気力と底力!
嗚呼、きっとこちらが本当の彼女


絵里奈さんは、最終日の午後も在廊してくださいます




オデット(2016)


とあるフライヤーに用いられたのを拝見したことがあり、
図らずも原画を観れてうれしかった1枚

この度、たくさんの白鳥が飛来する街に住むひとのもとへ
旅立つこととなりました




何がどう転ずるか、
わからないものです

困難の中にある不屈なる精神、
胸の内にある核心を、ほどけないようにきゅっと結ぶ気持ち、
伏せたまなざしの中に描く希望、、、


そんなことも感じながら

時世を忘れ、言葉無用に、その前で佇み続けたくなる
一枚の絵




いよいよ最終日
12日は16時にて閉幕です

昼頃より不破妙子さん、
午後から中村紗央里さん・大橋絵里奈さんが在廊されます

天気予報もまずまず
換気しつつ、マスク着用しつつ、名残りの桜と共に
お待ちしています