2024年11月15日金曜日

森島明子/いとおしき日々

前回、3年前に初開催した二人展は、6月から7月にかけての夏の季節の開催で、
森島明子さんの作品は、大きな向日葵の黄色や、梅雨時を描いた水色などが印象的でした。


再びの今回は秋を選んでの開催で、
銀杏(イチョウ)、薄(ススキ)、秋桜(コスモス)、、、
この季節の景色を中心に、四季の巡りを感じる作品が寄せられています。


以下は作品部分です。
ギャラリーの作品全容は作家メッセージのページをご参照ください⇒





《降る秋音》B2





《薄と月》SM

sold out




《秋桜》SM



彼岸花が様々な表現で、異なるタイトルで描かれているのも印象的で、
日本画と日本語の、味わいの奥行きを感じます。






《彼岸花》F20





銀色は雲母(きら)の煌き





《曼珠沙華》F4








《秋密》F10
あきひそか





明子さんは、生まれ育った京都と、現在暮らす新潟・加茂とで、
「彼岸花」への印象が大きく変化したとのこと。

京都に居た時には「あの世」に近いものとともに在るイメージであったのが、
こちらでは秋になると道端にも庭先にも、至るところで朗らかに咲いていて、
平穏な日常の中にあっていい花なのだ、と思ったのだとか。


「曼殊沙華」と呼ぶときは「祈り」に近いきもちとのことですが、
慎んだ思いを寄せるだけでなく、ただただ花としての不思議な造形やうつくしさを愛でたり、
その季節ならではの心象を重ねたり、、、

それは他の草木花に寄せるまなざしと同様の、いとおしいものになったのでした。






《あの日の空》F0




《朝顔》SM






《まぶしい夏の日》F0

sold out




《夏の終り》F0




今年も残すところ、ひと月あまり。
おふたりの作品とともに、過ぎた季節をまぶしく思い返します。

街路樹の銀杏がにわかに色づき、
裏の桜とハゼノキが、色づいた葉を急速に落としていきます。


間もなく到来する白い季節に、この秋の日のきらめきと
あたたかな談笑の余韻を連れてまいりましょう。





《薄の中の女の子》F50





《雪椿》F0






たくさん飾られたいとおしき小品は
お選びいただけるものが残り少なになりました







画像は色彩を再現できておりません。
会場では間近にご覧いただけるように、
額のガラスを外せたものについては、直にご覧いただけます。

作品は喫茶室にも展示しています。
奥のガラス棚まで、どうぞゆっくりとおたのしみください。

最終日11/17(日)は、作家在廊で16時にて閉幕です。







《ふたりのそら》  川田淳(写真)× 森島明子(日本画)

2024.11.6(水)~17(日)
OPEN 11:00~17:00  ※最終日は16時まで
休廊日 11/8(金)、13(水)





2024年11月14日木曜日

川田淳/サイアノタイプ

このたび初お披露目となった川田淳さんの Cyanotype print の作品。

「サイアノタイプ/青焼」は、印刷業や設計関係でお仕事をしておられた方には懐かしいもののようですが、私含め、初めて出会うお客様も多いようです。



《けふはけふ》(今日は今日)シリーズ





川田さんの作品は、通常の「青焼」に媒染の工程を加え、黒に近い、深い色の仕上がりになっています。

青焼用のネガフィルムを作ることが最も苦心するところで、幾度もやり直しをしながら程よい濃淡の階調を模索してきたとのこと。

用紙への焼き付け工程もまた、水彩紙に感光液を塗ることに始まり、露光のタイミングを見計らうなど、技法としては世に確立されたものであるものの、作家独自の感覚による追求が尽きないものであることは、他の美術表現と同じであるように思われます。

「青焼」について調べてみると、本来的な意味から、アート作品としての写真にまつわることまで、初めて知ることがたくさんありました。気になった方はぜひ検索してみてください。





「青焼」の工程の中で生まれた作品がこちら↓




《between negative and positive》 シリーズ






「写真と日本画の展示」と思っていらしたお客様は、
版画のようにも、絵のようにも見えるこの3枚に、まず考えさせられます。

黄緑色が印象的な淡いフォルムの画面は、
ネガフィルムが焼き付けられる途中をデジカメで写して、拡大して、プリントしたもの。




《between negative and positive #01》


↑ になる途中の瞬間が ↓






《between negative and positive #02》


↑ になる途中の瞬間が ↓






《between negative and positive #03》


↑ になる途中の瞬間が ↓




印象的な黄緑色は、用紙に手塗りされた感光液の色。

一見、版画のようにも見えるこの1枚は、
画面が刻々と感光して変化していく途中の光景をそのままに捉えた、
写真ならではの瞬間の記録なのでした。



 


《蒼生》シリーズより(作品部分)



紙の質感やインクの粒子、感光液の痕跡、、、

様々な物質感を感じる今回の作品は、川田さんいわく


「デジタルとアナログの融合」
「デジタルのアナログ的表現」


モノクロで、階調の幅にも制約があるという「 Cyanotype print / 青焼 」を通して、
何を、どう撮り、どう見せるかだけでなく、「写真」という表現の根源的なところにも、
新たに出会わせていただいたように思います。
 


会期末の土日は、作家在廊です。
ぜひ、実作品とともに、作家との語らいをおたのしみください。





《蒼生》シリーズより(作品部分)



《ふたりのそら》  川田淳(写真)× 森島明子(日本画)

2024.11.6(水)~17(日)
OPEN 11:00~17:00  ※最終日は16時まで
休廊日 11/8(金)、13(水)

作家在廊  11/9(土)、10(日)、16(土)、17(日)




2024年11月13日水曜日

川田淳/蒼生

川田さんの写真は詩的である
と、やはり詩的な心得がおありなご様子のお客様が、目を細めておっしゃいました。




《蒼生 #03》



川田さんが学生時代には国文学部で学び、俳句も嗜なまれると知ったのはこの会期中のこと。

キャプションに綴られた言葉は軽やかな装いですが、その根底に、作品が発する情緒のゆえんを感じます。




《蒼生 #5》


先人の教えは実に有り難い。

実に流行有て実に流行なし。
たとはば一円廓に添て、人を追ふて走るがごとし。
先んずるもの却て後れたるものを追ふに似たり。
流行の先後何を以てわかつべけむや。
ただ日々おのれが胸をうつし出て、
けふはけふのはいかいにして、
翌は又あすの俳諧也。

これは蕪村が『桃李』の序で流行について語った言葉だけれど。

(因みに『桃李』は「ももすもも」上から読んでも下から読んでも、ももすもも。


自分を顧みるに、先ずるものを追っている立場なのは間違いないのだけれど、
それが正しいかどうかは甚だ疑問で。

写真という表現にとって「新しい」ことが大切なのか?
それとも目新しさではなく「本質」を探求することが大事なのか……。
はたまた「新しい」ことが写真の「本質」なのか。

ただ、流行に疎い自分にとって、蕪村の「流行なんて在って無いようなもの」という言葉は大変心強く、早いところ世間が一周してきてほしいものだと願ってみたりして。

まずは、今日心にとどめたものを、そして明日はまた新しい気持で、
写真に向き合いたいと思っております。


川田 淳


(会場に掲示された挨拶文より )






《蒼生 #08》



今展の川田さんの作品は、ここ数年、挑戦してこられた、Cyanotype (サイアノタイプ/青焼)
の技法で水彩紙に焼き付けた写真がメインとなっています。


このトピックスに掲載した作品は、人物をとらえた《蒼生》シリーズ。

「蒼生」とは、漢文由来の「ひと/人々/人民」を表す言葉であるとのこと。

かねてから、自然はもとより人物を被写体にしていた川田さんですが、
昨今のプライバシーへの配慮の流れの中で、日常の人々の光景をスナップにおさめにくくなり、
被写体の模索を余儀なくされていることを3年前の展覧会の折にお聞きしました。


それでもやはり、まなざしは行き交うひとたちの生きる瞬間に向かったことが伝わってくるシリーズです。


「青焼」に重ねて「蒼(あお)」の字のつく「蒼生」をタイトルにしたとのことですが、

顔も定かでない、「人々」と呼ばざるを得ない距離感にあってもなお、
見知らぬそのひとの、人生の煌きや、来し方、行く先に思いを巡らせてしまうような瞬間に出会わせていただいていると感じます。



《蒼生 #07》



(部分)


画像はいずれも実際の色彩を再現できていません。

紙の質感や、それによって感じるインクの存在感、作家の手跡を感じさせる縁取りは、
版画のようにも感じさせる不思議な印象です。

ぜひ会場で実作品をおたのしみください。






《ふたりのそら》  川田淳(写真)× 森島明子(日本画)

2024.11.6(水)~17(日)
OPEN 11:00~17:00  ※最終日は16時まで
休廊日 11/8(金)、13(水)

作家在廊  11/9(土)、10(日)、16(土)、17(日)


2024年11月5日火曜日

【11/6 開幕】ふたりのそら

《ふたりのそら》  川田淳(写真)× 森島明子(日本画)

2024.11.6(水)~17(日)
OPEN 11:00~17:00  ※最終日は16時まで
休廊日 11/8(金)、13(水)

作家在廊  11/9(土)、10(日)、16(土)、17(日)




『たびのそら屋』での二回目の展示となりました。

「日本画」と「写真」の二人展という必然性の無いような取合せかとも思いますが、

表現に用いる技法は異なっても、伝えたい想いは「ジャンルレス」
(ちょっと恥ずかしい言い回しですが)です。

「日本画」と「写真」どちらにも興味を持っていただければ嬉しいです。


川田淳・森島明子






森島明子

《 薄の中の女の子 》

F50




川田 淳

《光の在処》

Pigment print


























↑ Photo by. KAWADA Atsushi ↓


  







会期中の喫茶メニュー「旅コーヒー」は、「そら」のイメージで思い浮かんだ
山形市の「オーロラコーヒー」さんに久しぶりにご登場いただきます ⇒

オーロラコーヒーさんもオリジナルブレンドをご用意くださるとのことで、
「FUTARINOSORA BREND」をリクエストさせていただきました。
お味のイメージはまた別途ご紹介いたします。

100g入りの販売用も少しだけご用意しました。
豆を挽いてお渡しすることもできますので遠慮なくお声がけください。

11/11 追記⇒ 豆売り分は完売いたしました
喫茶室での一杯をおたのしみください








そのほか、2025年のカレンダーも2種類、販売しています。










たかだみつみさん(木版画)と近藤実可子さん(刺繍)初のコラボカレンダー





今年、みつみさんの「アトリエM」で開催された二人展の素晴らしきハーモニーが、
新しい一年の日々の中で、やさしく、穏やかに、奏でられることを思い描きます。






こちらは近年恒例のお取り扱いで、待っていてくださる方の多い、
山口達己さんのカレンダー。来年のも大変素敵です☆


いずれもサンプルをご覧いただけます。