うれしいにぎわいをいただいている春の展覧会《 I am / 編む 》。
連日、店頭での語らいを満喫して力尽き、ブログ更新が追いつかぬままに早くも会期末。
今回は Instagram 先行で発信しています⇒ @tabino_soraya
アカウントがある方はどうぞご覧ください。
例年この界隈では一番に咲くそら屋裏の桜は、週末にはちょうど満開。
追いかけるように対岸の桜も咲き始めました。
5名の作家による、様々な「編む」をたのしませていただいています。
様々な素材を用いてコンセプチュアルな作品を手掛ける加納いずみさんは、
今展では絵画を中心にご出展くださいました。
毎度ながら込められた思いが気になるところですが、
今回は「感性に頼りたい」との思いで、作品解説のキャプションは添えられませんでした。
皆様、どんなふうにご覧いただいたでしょうか。
私はいずみさんの発想や心情を綴ることばが好きです。
最終盤、答え合わせのように「雑文」と書かれた展覧会への思いと、
作品についてのコメントをご紹介いたします。
《SPRING》
《 I am/編む 》にあたって 雑文 (加納いずみ)
毛糸での編み物、最近はやっているみたいですね。私も好きです。
家族とくだらない会話をしながら進める鍵編みも、寝食を惜しんで没頭する棒編みも好きです。
ずいぶん長い間していませんが。
寝ている時間、働いている時間、食事や衛生面の必要な時間のそれ以外、
いわゆる自由時間、休息時間と呼ばれている隙間に「編む」は発生します。
常に生産的なことをしていなくてはいけないと強迫観念にとらわれてしまいがちな
現代人にぴったりの作業なのかもしれません。
「家族のだんらんをしながらの編み物、気づくとマフラーが出来上がっている!!!」
うっかりするとすべてSNSの閲覧で溶けてしまいそうな時間が手を動かして行う作業に
消化されるのはメンタル的にもよいかもしれませんね。
今回はアクリル絵画を中心に作成しました。
細かい作業を続けることと編むことの共通点を見出そうと制作しています。
日常を積み重ねる、同じ作業を繰り返すというのは編むに似ている行為です。
細かい網目を折り重ねて完成する1枚のマフラーのように、
細かい作業が積み重なって俯瞰してみた後に出来上がる表面のテクスチャー、
見える景色を楽しんでいただきたいです。
2024年7月に開催させていただいた三人展では、コンセプチュアル作品としてかなり説明文を加えました。
「観る」と併せてかなり「読む」時間もあったと思います。
今回は感性に頼りたいと思い、展示では説明文をはじいています。
〇ガーベラ
学生時代に制作した手法でもう一度制作しています。
ちょうどスピッツの「ガーベラ」という曲を聴いていた頃で曲のイメージと重なることからタイトルにしました。(わかる人はいないと思いますが・・・かなり個人的なタイトルです。)
小さな「まるかいてちょん」は細胞のつらなりや水の泡のようなものです。白いもやの中で薄いレイヤーのようにカーテンのようにおおわれている光そのもののイメージです。
〇迷路
小学生のころ自由帳に描いていた迷路を本気出して描いたものです。
《 迷路 B 》
〇SPRING
水性ペンで線を引く作業を繰り返しています。今回は2パターン追加で作成しました。
暗い画像のもの、明るい色を選んで重ねて線を引いています。いずれも春の季節が魅せる気持ちの高揚、ハイになる感じ、新しい出会いやクラス替えの違う環境でグラグラしていて一歩足を踏み外すと違うルートになってしまいそうな不安定な感じからSPRINGにしています。
〇夜の海
「人魚は、南のほうの海にばかり棲んでいるのではありません。北の海にも棲んでいるのであります」から始まる小川未明の「赤い蝋燭と人魚」が好きです。この物語に出てくる海の描写があまりにも冬の日本海すぎて、これまで歌や映画で扱われる大きく広く母なる海と私が暮らす新潟の海を別物としてとらえていたことに気づけた作品です。
冷たくて重い黒い砂浜、常に止まない風、墨汁みたいな夜の海をイメージしました。
私の住むにいがたの夜の海です。
〇ネックレス
過去に一度発表したものをもう一度制作しました。今回は、トルソーもつけて百貨店風に。
楽しい作業でした。一番「編む」に沿っているかもしれません。
喫茶室窓辺には、石原さん、勝見さん、加納さんのポートフォリオのファイルがあります。
これまたあっという間に完売してしまいそうです☆彡
2025 SPRING EXHIBITION