2022年9月8日木曜日

家族のシリーズ/色について

SINZOWさんによる作品解説③

タイトルの記載の無い画像は、先のトピックスでご紹介した作品部分です。
※色彩は実作品を再現できていません。ご容赦ください。




 家族のシリーズ 》 (2021年の文章で、文中の年齢は当時のものです)

夫が転んで骨折し、救急車で運ばれ、そのまま入院、手術となった。夫も56歳になり、昔のようにはいかなくなったのだろう。人生が新しいステージに入った。私が夫と息子を支える我が家の大黒柱シリーズを描くことにした。私は今までも自分の日常生活や家族との関係性を絵のモチーフに扱ってきていて、今回も同じだが、最近大きな変化もあった。








一つは色についてである。若い頃は自分の育った場所の色、原風景の色にこだわってきた。自分の中に経験として蓄積されていない色は使うべきでは無い、という考えを持っていた。そして私の原風景の色といえば、グレーだった。工場の多い、海も山もほとんど見えない場所で育ち、国道沿いのたくさんの車と信号、パブやバーのネオンライト、そしてビル、工場。そこでグレーを主体とし、人工的に作られたケバケバしい、派手な赤や青をポイントに使用することにしていた。ネオンの色のような。(バーミリオンやコバルトブルーのような自然から生まれた美しい色は使うべきでは無いと考えていた)







《 おかしな二人 》

キャンバス・アクリル/31.8×41㎝/2019



しかし、新潟に移り住み、海や山、美しい夕焼けを毎日眼にするうちに、次第にバーミリオンやコバルトブルーも私の中に蓄積されたのではないか、と思えるようになり、自然色を使うことも少しずつ許すようになっていった。


私はいつも制作をするとき、自分は何者なのか、色についても、その色を使うことが許される人間なのか、と長い間、自問自答してきた。しかし今回のシリーズでは、私の中で何かが弾け、自分が使いたい色を自由に使っていいんだ、という新しいステージに入った。








《 午後 》

キャンバス・アクリル/24.2×33.3㎝/2019



今までの作品に対しての考え方は後天的要素を中心としていた。
生まれた環境、育った環境から私の中に染みこんできたものを作品に投影するというやり方。


しかし新しいステージでは先天的要素に目を向けている。自分がただ無心に欲するもの、それについてただ子供のように素直に表現する。





今回、発色の良い絵具、アクリルスプレーなど、今まで使ってこなかった絵具を多用している。
そこには理由など無く、ただ、自分が見てみたい世界を描きはじめている。